「成長企業の人材育成」

安藤弘一講師「管理職に求められる能力について」
 

成長企業における新人の育成について

 -新人を傍観者意識にさせてはならない-


■仕事の意味理解を促すのが、新人育成の基本

成長企業では創業者や創業に携わった人びとが、挙手空拳で事業を立ち上げ不眠不休の働きと種々の局面を乗り切り、成長軌道に達するのが常道です。こうした企業では創業当時からの「朝令暮改」や「臨機応変」のスタイルが常です。創業期を体感していない新人にとっては、このスタイルが違和感や理不尽と映る場合もあります。確かに企業の組織構築が成長に追いつかず、ともするとマネジメント層の育成が行き届いていないという原因により、経験論や根性論が先行しがちであることも十分に理解できるところです。もっとも、どのような企業組織でもすべての業務が、合理的に展開されているとは限らず、一見すると理不尽に思われる行動規範の下で展開されている場合があるものです。

他方で見方を変えるならば「朝令暮改」や「臨機応変」が、今日の激しい変化スピードの中で成長する要因であったとも見ることができます。こうしたある種の「不合理性」は、安定した企業に慣れ親しんでいる者や安定志向の者、さらには組織的な就労経験のない者にとっては、非常な違和感となることも事実です。

とりわけ、組織的な働き方に不慣れな新人には、企業の目標と自らの成長課題が乖離して、企業組織で日々発生する仕事上での「不合理性」に過剰反応する傾向が強いと思われます。そこで新人育成の基本は日常業務で発生する「不合理性」に対して、ストレス耐性をつけさせていくことが重要になってきています。

ここでいう「ストレス耐性」とは、新人に対して理不尽な事柄に耐え忍ぶ「根性を磨け」などということではありません。企業組織で働くということは、あくまでも「仕事は与えられるものではない」という仕事に対する主体的な意味づけと自らの取り組み姿勢という根源的な事柄について説いていく必要があるということです。さもなければ、仕事は「苦役」であり強制された「やらされ仕事」という意識から終生逃れられないものになってしまうからです。

■人生のなかに仕事を位置づけさせる

新人の育成にあたって安易に「世代間の意識格差」を持ち込むのは意味のあることではありません。しかし、最近の新人には「職につく」すなわち「就職」ということと「就社」を同一視する傾向が強いことは確かです。そこで、企業が新人に施す育成のポイントは、自分の企業における仕事を自分の人生においてどのように位置づけていくか、ということを常に考えさせる習慣をづけてもらうことでことではないでしょうか。

さらにいえば、新人が自分自身で企業での仕事を通して「どのようになりたいのか」「何を得たいか」を明確に語れるように導いていくことであると思います。先ずはいま与えられている仕事=課題から眼をそらさず(=逃げず)に取り組む姿勢を醸成させることです。そのためにはビジネスマナーや所作も含めた基本動作の持つ意味や効用などについてもしっかりと説いていくことが極めて重要なことです。

P.F.ドラッカーは仕事について「最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない。しかも、得るべきところを知り、向かいたい仕事に移れるようになるには数年を要する」と喝破しています。新人の育成に心がけなければならないのは、仕事とは外部からの動機づけに頼らず、自分自身で立てた目標を一つひとつ達成させることで得られる成果を自分に蓄積していくことであることを上司・先輩が弛まずに説いていかなければなりません。

■新人に傍観者意識を持たせてはならない

新人は「自分に与えられている日常の業務を繰り返していればいい」という姿勢に陥りがちです。新人の場合には与えられている権限もなく、こうした意識に陥るのは当然かもしれません。また、指導する上司・先輩の側も「何はともあれ、いわれた事をしっかりと実践してくれればよい」との思いが強く働きます。

しかし、「日常の業務を繰り返し」を何時までも放置してしまえば、結果的に行動もせずに、ものごとの善し悪しを訳知り顔で語るだけの「評論家」を増殖させることになります。さらに高じれば自らの主体的行動を顧みない単純な「万年不満分子」となり、会社組織の活力を奪い、内部から腐敗させていく元凶になっていく危険性もあります。

そこで、新人育成では常に「当事者意識」を如何に持たせていくのかという課題が重要になります。成長する企業は例え新人であっても一人ひとりの傍観者意識が、企業組織の発展の妨げになります。新人育成では「どうやったらできるか」という問題設定と視点を磨くことが、結果的に自らの成長につながることを上司・先輩が率先して示していくことが重要です。

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◆本間  次郎◆

株式会社ノイエ・ファーネ  代表取締役

1954年生まれ。大学在学中より出版・編集業務に携わり、主に労働経済関係をフィールドとし取材・執筆、編集業務に携わる。1992年から中小企業経営 者向け経営専門誌の編集および、教育・研修ツール(冊子媒体、ビデオテープ)等の作成、人材の教育・育成に関する各種オープンセミナー・インハウスセミ ナー企画の立案・実施、人材開発事業・人事コンサルティング業務に従事。
2010年11月に『人と企業組織が互いに「広い視野」「柔軟な思考」「健全な判断」に基づいて行動し、最適な働きの場を創り出していく協働に貢献する』を使命とする株式会社ノイエ・ファーネを設立。

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