多くの日本企業が導入済!「職能資格制度」の基本を押さえる
2020.03.24
- ビジネス
会社員が絶対に逃れられないもののひとつに「人事評価」があります。人事評価が高ければ、組織内で厚遇されることもあるでしょう。組織のなかで生き抜くためには、会社がどんな人事評価制度を持っているか知り、評価につながる行動をすることが大切です。この記事では、気になる人事評価制度の基本、とりわけ多くの日本企業が導入している「職能資格制度」について解説します。
「人事評価」で最も大切なことは公平性
企業経営を円滑に行うためには、「従業員にどのような基準で仕事を与えるのか」「従業員の能力をどのようにチェックするのか」「従業員の賃金をいくらにするのか」などの諸問題をクリアする必要があります。
これの問題に対処するために作られたのが人事評価制度。一定のルールを作ることによって、公正性を担保しようという試みです。
人間は、感情の生き物。そして、他人と自分を比較します。「なぜ、あの人の評価は私より高いのか」という“不公平感”を元にした当然の疑問に答えるためにも、人事評価制度は重要なのです。
社内格付けを行うためにも使用される「人事評価制度」
従業員数が数人という企業なら、役職を設けないフラットな組織運用が可能でしょう。しかし、従業員数が30人程度になった場合は、社内格付けを導入したほうがよいと一般的に言われています。
社内格付け、例えば、部長や課長、係長などが代表的なもの。格付けを導入することで、意思決定プロセスと責任体制が明確化され、仕事が進みやすくなるというメリットがあります。
多くの日本企業に導入されている「職能資格制度」とは?
「職能資格制度」とは、職務遂行能力に応じて格付けを行う制度です。まず、各々の職能資格には「職能要件(職務遂行能力の要件)」が定められています。
例えば、課長なら「部下を指導する能力」が必要ですよね。これが「職能要件」に当たり、これを満たすと、昇進、昇格が行われるという算段です。
人事考課は職務遂行能力を計測するために行われるもの。人事考課の結果は、昇進、昇格だけでなく、昇給にも反映されることになります。
なぜ給与が上がらないのか?人事評価制度のメカニズムを理解
今の給与に満足していない人も多いでしょう。その不満は、きっと5年経過しても無くならないでしょう。
理由はふたつあります。ひとつは「必要滞留年数」の存在です。人事評価制度には、上位資格(例えば、係長から課長に昇進する)に上がるために必要な年数を定めているからです。
「係長を3年経験しないと課長には上がれない」と人事評価制度のなかで明言しているのです。そのため、短期間で昇進することは極めてまれ。
係長から課長に昇進は3年、課長から部長に昇進は5年などと決められていれば、よほど順調にいったとしても部長になるまで8年は必要な計算になります。当然のことですが、格付けが上がらなければ飛躍的に給与が上がることなどありません。
次に「職務遂行能力は伸びない」ということです。経理を担当する会社員を例に挙げて説明しましょう。最初の一年は仕事の流れを覚えることに必死です。2年目はまだ吸収することがあるでしょう。ところが3年目はどうでしょうか。むしろ、やりがいどころか、マンネリを感じているかもしれません。
結局、年数を重ねても同じことを繰り返しているだけだと気づくでしょう。1~2年目は、職務遂行能力は向上しますが、3年目からはあまり伸びません。そのため、同じ仕事をしていても給与は上がらないのです。
「職能資格制度」は配置・異動に柔軟
「職能資格制度」は、能力が一定レベル(「職能要件」を満たした状態)になると、昇進、昇格を決定するものです。
例えば、「職能要件」を満たし、経理部長に昇格した人がいたとしましょう。この人は、部長になる職能が備わっているので、異動しても横スライド、つまり部長になるわけです。
大企業や公務員などでは、よくこのような人事が行われ、現場からは「マーケティングのことをまったく知らない〇〇さんが来た」などと話題になることがあります。
「職能資格制度」の問題点とは?
「職能資格制度」には大きな問題点があります。それは「降格が困難」であることです。いったん「職能要件」を満たしたものとして、昇格させたものの、組織の都合から降格させたいケースもあるでしょう。
人の能力は、基本的に「落ちないもの」として認識されています。ですから、能力が落ちていないのに、降格させるのは理にかなっていないわけです。
もし、「職能要件」を満たした人が大量に生まれ、部長が増えてしまったら……。行きつくのは、人件費の増加、果ては倒産の憂き目です。
「職能資格制度」を基本とした人事評価制度には、利点もあるものの、運用を間違えると厄介です。
自社の人事評価制度をチェックしよう!
日本企業の多くは「職能資格制度」を導入しています。どのような「職能要件」が定められているかチェックし、その要件を満たすよう努力するのが昇進、昇格への早道です。
配信元:日本人材ニュース