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キャリアデザインについて語る

2024/05/21更新

キャリアデザインについて語る

キャリアデザイン支援のきっかけ


私は20代の頃からずっと人材の現場にいます。当時はちょうど人材派遣が伸びてきた時期で、私の入った人材派遣会社でもそろそろバリ エーションをつけようとしていました。そこでITや、年齢の高い層に特化したものを作ったりしたのです。私がこれほど長く人材業をしているのは、「いろいろな働き方が世の中にあっていいのではないか?」という思いからです。当時は朝9時出勤、5時に終わって、2時間残業して、焼き鳥屋で飲むという世界が当たり前だったのです。


でもそうではなくて、9時に始まる保育園に子どもを預けるので、9時に出勤することなんて無理という人たちもいるのです。そういう人たちにも働く能力があって、世の中が欲しいと思っているわけです。それならば、もうちょっとやわらかい働き方があってもいいんじゃないか。ハーフタイムとか、月に10日だけの働き方など、自分の状況に応じて選べるような仕事を提供しようというのが、私が人材業を始めて2年くらい経ったときに思ったことです。


そして企業と労働者という関係ではなく、個人として自分のキャリアをデザインする。会社を舞台として、自分が発展していくという考え方をして欲しいなというのが、私がこういう仕事をするようになったきっかけです。


自分の強みを知り、行動パターンを変える


個々の方々の強み、弱みに対する私のスタンスとしては、人間の強みと弱みは表裏一体なので、強みの方を強化すれば、自然と弱みの方もプラスに強化されると思っています。ただし、私はそれほどこだわっていないですね。表裏一体ということは、その人が持っている弱みは、他のフィールドから見たら強みかもしれない。逆にその人の強みは、他のフィールドでは弱みになるかもしれません。キャリアデザインの肝要なところは、自分の「特徴」を強みだと思ってもらえるフィールドを選ぶということです。


例えば、私は騒がしい人間なのですが、それを「使える」と思ってくれる会社と「騒がしいだけだ」と思う会社と、両方ありますよね。それなら私は前者の会社に入ればいい。それで評価が高くなります。褒められるからどんどん仕事ができるようになる。ところが後者の会社に入ってしまうと、「うるさいから静かに仕事をしなさい」とずっと言われ、萎縮して仕事ができなくなってしまいます。


自分にとってどちらを選べばいいか。そのために「自分の強みと弱み」を知りましょうと私が言うのは、そういう理由からです。もし自分が入った会社のフィールドに合わなかったら、どうやって合わせていくかを考えなくてはいけない。いきなり辞めるのではなく、組織の中で自分に合うところはきっとあると思って、そこを探して、そこに自分が着床して伸びていく。植物は自分に一番いい環境で芽を出しますね。あれと同じです。人間はけっこうそれができないのですね。


入社2、3年目になると、自分が想像していた職場とは違うという思いが大きくなってくることもあるでしょう。そういう相談を受けたときは、「まず行動パターンを変えられませんか」とアドバイスします。性格は変えられないけど、行動パターンは変えられます。行動パターンを変えることで、その組織に馴染むことができる場合があると思います。まずはそれをしてもらいます。


自分の行動パターンを変えることで得るものがあるという人は多いようです。性格を変えようとするとつらいですね。でも朝7時の起床時間を6時に変えることはできますね。それだけで絶対に世界は変わってくるのです。細かいことからやれば、続けられます。「朝6時に起きます」と宣言して、7時に起きてしまったらチェックできますね。でも「性格を変えます」と言っても、チェックできないでしょう。そういう風に、他人から見てチェックを入れられるようにする。それが進捗管理なのです。研修や育成では、そういう目標パターンを作っていきます。そうするといつの間にか、自分が変わっているということが分かるのです。


30代、40代のキャリアデザインとは


30代になると、一つの節目が来ます。まず体力が落ちてきます。その体力が落ちてきていることを認識して仕事をしなければいけません。でもそういうときは、ちょうどマネージャーになったりする時期でもありますので、神経も使わなければいけない。ですから30代というのは、組織の中では20代よりかなり厳しい状態になります。そういう生理的なことをまず認識しなければいけません。


それと同時に、結婚したり子どもができたり、社会的な役割もたくさん増えてきます。そういう年代だということを認識していただいて、「迷っているのはあなただけではない」ということを分かっていただいています。


例えば技術系の方では、会社組織の中で管理職になるのか、技術職として現場で働いていくのかという選択肢が出てきます。そういうところで皆さん悩んでおられるのですが、そういうときに自分の強みとして、自分のどこが一番評価されているのか。あらためて十数年を振り返って整理していただくことで、「こちらの方がいいかも」という風に、自分の中で少しすっきりしていただくことが大前提としてあります。


決めるのは皆さん自身ですが、私たちのやることは道筋をきれいに見せることです。今まで漠然としていたものを、「こちらのコースもございます、こちらもございます、どちらがあなたの性格に合っていますか」という感じで見せてあげる。それが30代に対してやることです。


40代については、特に40代半ばになると、そろそろ定年が射程距離に入って見えてきます。そうすると普通のサラリーマンは、定年をどううまく乗り越えるかということに、もう頭の一部がシフトしています。なおかつ仕事はもっと責任が重くなって忙しくなります。ですから40代が一番きついのではないかと思います。


いつかは来る定年に対して、自分の会社の仕事と、市民として住んでいるところ、そしてプライベートの部分をそろそろ見てもらわないといけないと思います。いままでは仕事が一番大きな部分だったのが、そろそろ自分の個人のこと、市民としての自分ということを、ちょっと頭に入れておいてもらいます。


まだそこまでシフトできなくても、頭に入れておいて情報収集することで、不安がなくなると思います。60歳になっても地域に帰れない人たちがたくさんいますが、それは40代に何も考えずにばく進していた人たちです。


働く女性のキャリアデザイン


私の周りの、バリバリに働いている女性については、まず配偶者との関係がすごく良いというケースが多いですね。私より1世代上の人たちにとっては、女性がバリバリ働くよりは、結婚をしていなければいけなかった。でもそういう人たちが頑張ってくれたおかげだと思いますが、私たちの世代は、パートナーとの関係が良いほうが、仕事もできるという感じがします。


遅くまで働いて家に帰ったら、「おかえり」と迎えてもらいたいのは誰でも同じです。それは共働きで女性のほうが夜遅く帰ったときにも、夫に「おかえり」と言ってもらいたいですよね。それを夫に「いつまでほっつき歩いてるんだ」などと言われたら腹が立ちますし、その時点で、リラックスすべき家庭でリラックスできなくなるのです。つまりそこで無駄なエネルギーを消費していることになります。


また、地方都市では、キャリアデザインを少し変えなければいけません。地方都市ではまず通勤時間が全然違いますから、地域との距離がものすごく近いのです。東京は、東京都で働いて近県へ帰って寝るというパターンです。ですからキャリアデザインは行なう場所によって少し変えなければいけません。東京では、会社が終わってから同僚の家へ行ってご飯を食べるなんてあり得ないですね。でも地方ではあり得るようです。ですから生活スタイルそのものが違うのです。最初の理屈は同じでも、問題点の抽出が少し違います。


キャリアデザイン研修の意義


「キャリアデザイン研修」は、企業側にしてみれば、どれだけコスト パフォーマンスの高い社員に養成するかということの第一歩だと思います。ですからまず、自分の立ち位置を把握することが大切です。自分が何をしなければいけないかを把握しないで文句を言うなというのが、会社の言いたいことのすべてだと思います。あなたのやらなければいけないことはこれです。それをやりたいのか、やりたくないのか。給料をもらっている限りはやらないとね。やるのだったら、前向きにやってみましょう、ということです。やる気にならないと効率が上がらないというのは、会社としてはマイナスの生産性になってしまいます。


研修後にアンケートをとって、「良かった」という評価があっても、それは見せ方の問題です。しかし実は研修というのは、会社はこういう判断をするからね、と言っているだけです。講師はそれを、いかに受講者の皆さんにわかってもらえるか。本当に理解するのは、集団研修では無理な部分もあるので、ある一定レベルまで理解してもらえれば成功だと思うし、それによって本人の気持ちの軸が、少しでも明日に向けばそれでいいのだと思います。コストパフォーマンスはそれでOKということです。


キャリアデザイン研修でも、技術研修でも、企業としてはそのコストパフォーマンスを継続したいということです。ですから今までは20代で入社させたら定年まで研修などやらなかったのに、今はちょこちょこと研修を入れて、考え直せよ、と企業が言っているわけです。受講者としては、それをチャンスと受け止めて行動パターンを変えるか、つまらないなと思って変わらない人生を送るか、それはその人それぞれです。


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