今こそ「理想のフォロワー」を目指せ!(前編)~組織の大多数を占める「リーダーをサポートする人」の働き方を考える

今こそ「理想のフォロワー」を目指せ!(前編)
~組織の大多数を占める「リーダーをサポートする人」の働き方を考える

組織というものは、リーダーとその部下(フォロワー)によって構成されています。そして大多数の人は、入社から定年まで長きにわたる社会人生活において、フォロワーとしての時間を多く過ごします。リーダーと呼ばれている人にも上司がいて、トップ以外のすべての人が、自分より上位のリーダーのフォロワーであり続けます (係長は課長のフォロワー、課長は部長のフォロワー、部長は役員の......)。

多くの人が「フォロワーとしての人生」を選択しているにもかかわらず、これまでの組織論の多くは、「優れたリーダーの条件」などリーダーについて語る視点に偏りがちです。また、子供の頃に「リーダーを目指せ」とはよく言われても、「フォロワーを目指せ」とはあまり言われません。あまりにも多くの人が当事者であるゆえに、「普通」なこととして取り上げてこられなかったのでしょうか。

今回は、これまであまり重きを置かれてこなかった「フォロワー」について、徹底的に解説します。リーダーにとって都合のいい「従属者」という存在から脱却し、リーダーを積極的に支え、ときに批判やフィードバックを与えながら、ともに組織の共通目的を実現するための「パートナー」になることができれば、「フォロワーとしての人生」は大きく変わるはずです。

「理想のフォロワー」とはどんな人なのか、自身はどのようなフォロワーを目指すのか、一度立ち止まって考えていただく契機にしていただければ幸いです。

1.「フォロワー」と「フォロワーシップ」とは

組織の共通目的の達成のために、リーダーをサポートする人のことを「フォロワー」と言います。どんなに優れたリーダーがいても、リーダー一人で仕事をすることは当然できません。リーダーと、その周りで一緒に仕事をするフォロワー両方の存在によって、あらゆる組織は成立しています。

■組織の中でフォロワーに求められる3つの役割

①部下としてリーダーをサポートする役割
リーダーの視点で仕事を進め、適切に報連相を行う。

②後輩にとっての「教育・指導者」としての役割
目標達成に向けた具体的な役割を後輩に伝え、活動を支援する。適切なフィードバックを与え、後輩の成長を促す。

③業務推進者としての役割
主体的に問題を捉えて改善を図ることで、後輩にとっての模範となる。

これら3つの役割を、リーダーから指示を仰ぐことなく、すべて自律的に果たすために必要となるのが「フォロワーシップ」です。フォロワーシップを発揮できる人は、組織やリーダーの方針・意思をよく理解したうえで、組織のパフォーマンスを最大化するために自分がすべき行動を適切に判断し、実行に移すことができます。

リーダーの命令を確実に遂行するのはもちろん、命令がなくてもどうすれば組織に貢献できるのか推測し、行動を起こしていけるのが真のフォロワーシップです。

■フォロワーの力が重要視される背景

これまでの組織では、リーダーの指示に従い動くことがフォロワーの仕事と思われていましたが、現代では、以下のような背景から自律的に組織を支えるフォロワーの力が重要視されています。

(1)市場の多様化に伴う「アジャイル型組織」への移行

消費者のニーズが刻一刻と変化・多様化し、製品やサービスのライフサイクルが短くなっていることから、組織はさらに経営のスピードを速める必要に迫られています。最初に仕様やスコープなどのプロジェクト要件を固めてから着手するという従来の開発手法(=ウォーターフォール型)では、時代の変化に追いつけません。

そこで、おおよその仕様だけで開発を開始し、小単位でのPDCAを繰り返しながら徐々に開発を進めていく「アジャイル型」の開発手法が世界で注目されています。それに応じた組織デザインを行うために、現場の意思決定で環境変化への柔軟な対応ができるよう、権限委譲を進める組織も出現しています。

変化に対する戦略的/組織的な意思決定を、現場レベルで迅速に行えるようになるためには、リーダー一人に判断をゆだねるのではなく、現場をよく知るフォロワーこそが主体者となり、組織に自律的に貢献するフォロワーシップを発揮する必要があります。

(2)牽引型リーダーシップの低下

昨今では、「牽引型」のワンマンなリーダーシップよりも、部下と同じ目線に立てる「共感型」のリーダーシップが求められるようになったと言われています。

その背景には、「個」が重視されるようになった社会情勢の変化があります。多様性が尊重される現代においては、リーダーが自分のやり方に当てはめて組織を束ねるスタイルより、一人ひとりの持てる力を存分に引き出し組織の成果につなげるスタイルの方が、部下の支持を集めやすくなっています。

また、2020年からいわゆる「パワハラ防止法」が施行されるなど、職場のコンプライアンス意識は年々高まっています。その結果、ハラスメントを恐れて厳しいことを言えなくなったと感じる上司が増えていることも、牽引型リーダーシップの低下につながっていると考えられます。

強いリーダーがいなくても組織の成長を止めないためには、すべてのフォロワーが強い意志を持ち、自ら組織を支える役割があると認識しなくてはなりません。

2.フォロワーに求められる2つの力

先に述べた「フォロワーの3つの役割」の中でも、フォロワーとしての最も本質的な役割と言えるのが、①の「部下としてリーダーをサポートする役割」です。 その役割を果たすために必要な力が2つあります。

(1)支援する力

リーダーへの支援には様々な役割・仕事が含まれますが、自分の損得勘定に基づく働きかけや、リーダーに対しての「ゴマすり」は、真の意味での支援とはいえません。リーダーへの支援を通じて、組織の共通目標の実現に寄与することを念頭に置き、そのために自分にできることを考え、主体的にリーダーを支える行動が求められます。

(2)リーダーに提言する力

リーダーに言われた仕事をただやるだけでは良いフォロワーとは言えません。目的と自分の信念に基づき、場合によってはリーダーに対してよりよい改善を提案することも必要です。同じ組織において、すべてのメンバーは役職に関係なくひとつの目的に向かって働いています。そのことを常に念頭に置き、リーダーが目的に向かって突き進む際には伴走してサポートし、リーダーが本来の目的を忘れてしまった際には臆せず軌道修正を提言するなど、リーダーとともに自らも目的の達成を主導しているという意識が重要です。

これら2つの力をバランスよく発揮することができれば、フォロワーは単なるリーダーの「従属者」ではなく、組織を構成する重要なメンバーとして、組織運営上でも大きな影響を与えることができます。

そうとは言っても、フォロワーに組織上の正式な権限があるわけではありません。フォロワーの立場で、リーダーから指示されていないことを率先してやったり、さらに改善まで求めたりするのは、大変な勇気がいる行為です。チームの目標達成のためにやるべきことをやるという強い思いと、自分自身を信じる気持ちが、勇気の源となります。

■自分を信じる気持ちの"源泉"となるものは

・リーダーに真実を隠すことなく伝えることのできる率直さ
・広い視野に立ったうえでリーダーに助言を与えることができる冷静な判断力
・これまでひたむきに自分の仕事に励み、培ってきた知識と経験
・支援を得られる部署内、他部署、その他外部のステークホルダーとの信頼関係

上記の人間力・スキルを武器として、平時はリーダーとむやみに張り合うことなく穏やかに補佐しながら、しかしここぞという時にはリーダーに忖度なしで提言することが、フォロワーに求められる大切な役割です。

3.リーダーとの「盤石な信頼関係」を構築する

フォロワー個人の力がどれだけ備わっていても、フォロワーとしての真価は、「自分のリーダーからどれだけ信頼されているか」で決まるのではないでしょうか。もちろん、厳しい競争を勝ち抜いてきた百戦錬磨のリーダーから頼りにされるようになるには、フォロワーにもリーダーに劣らない実力が求められます。経験の浅いフォロワーの言うことなど一蹴されてしまうのでは、と懸念されるのも無理はありません。しかし、成長過程にあるフォロワーでも、同じ組織目標に向かう同志として、リーダーとの信頼関係を築くことは可能です。逆に、ベテランのフォロワーが若きリーダーを支える場合でも、お互いを尊重し合える関係性を構築することが重要です。

■リーダーとの信頼関係を築くためのキーワードは、「対等」と「共感」

(1)対等

リーダーに対して、肩書や外から見える評価を全く意識せずに接するのは難しいものです。しかし、組織内の立場が異なる相手でも、「一人の人間」としては対等であると自覚するべきです。

表面的な地位の高さに怖気づいてしまうと、言いにくい意見や異なる意見を伝えられなくなってしまいますが、自分の率直な考えを伝えるためには、対等な姿勢で相手と向き合わなくてはなりません。もし、リーダーと話すときにいつも相手の顔色をうかがってしまうなら、表面的なものではなく相手の本質を見るようにしましょう。

リーダーの表向きの力におびえず、誠実でオープンな人間関係を築くことを心がければ、フォロワーの率直な意見をリーダーの耳に届けることができます。

(2)共感

強力なリーダーシップを発揮して、目標達成に向かって邁進しているように見えるリーダーも、一人の人間として、メンバーには見せられない弱さや不安を心のうちに抱えています。そこを理解したうえで、リーダーの苦労を分かち合うことができれば、立場を超えた共感が生まれやすくなります。共感こそ、リーダーとの信頼関係を築くための第一歩となります。

リーダーの苦労を分かち合うには、フォロワーも共通目標に向かって全力で走っていると伝えることが重要です。例えば、自らの役割を果たすにあたり迷ったり行き詰まったりすることがあれば、リーダーに率直に打ち明け、アドバイスをもらうようにすると、同じ「仕事に真摯に向き合う仲間」としての共感を得ることができます。

逆に、リーダーが困難にぶつかっているときは、どうしたら共通目標にかなったフォローができるのか、リーダーの立場に立って考えてみましょう。フォロワーが得意とする分野で役に立つ知識やスキルがあれば積極的に共有し、現状打破することができれば、リーダーからの信頼は盤石なものとなります。

4. リーダーとフォロワーの「立場を超えた」パートナーとなることを目指す

フォロワーも強い意思を持って組織を支えなくてはならないとはいえ、組織運営において実際に権限と責任を持っているのはリーダーです。ピラミッド型の組織においては、「上司と部下」という序列や上下関係が存在します。

その中でフォロワーが自分の意思で動くのは難しいと考えるのは無理のないことです。また、牽引型リーダーシップが低下しているとはいえ、組織の中でフォロワーを支配しようとするリーダーもいまだにいるでしょう。

もっぱら上位にいるリーダーが下位のフォロワーの行動に影響を与えるものと考えられがちですが、組織の共通目標を達成するためには、フォロワーにも、リーダーに影響を与え、時にはリーダーの行動を修正する責任があります。その責任を果たすためには、フォロワーがリーダーに対して遠慮する必要はありません。

【リーダーとフォロワーの関係性】

本来、組織の共通目標によって引き寄せられたリーダーとフォロワーは、大きな目標のもとにおいては対等です。フォロワーとは、リーダーの後ろをただついて走るのではなく、共通目標を視界にとらえながらリーダーと並走する「パートナー」であるべきです。

目標に向かってひた走るリーダーが、もしも死角にある障害物に気づいていなければフォロワーが声をかけ、道を間違えそうになったら軌道修正する。これはリーダー(上司)がフォロワー(部下)に対して行うことと同じです。お互いに影響を与え、自分の強みで相手の弱みを補完し合えるような、いわば「立場を超えた」パートナーになることが、組織の成長のためには不可欠です。

■リーダーとの関係性次第で、フォロワーの仕事は俄然面白くなる!

真に優れたリーダーは、組織の共通目標のために、フォロワーが立場を超えた「フォロワー力」を発揮するのを期待しています。痒いところに手が届くような、細やかな支援を待っているのはもちろん、フォロワーの提言が価値あるものなら、リーダー自らが一番の理解者となってフォロワーの支援をしてくれるはずです。

フォロワー発信の企画の実現に向けて、リーダーの上司や他部署の協力が必要なら、リーダーにその調整役をお願いしてみましょう。他のメンバーにとって、フォロワーが自ら指示を出すより、リーダーからの指示という形の方が望ましい場合もあります。

このように、リーダーとフォロワーが「立場を超えた」パートナーシップを構築することで、フォロワーの立ち位置を単なる「従属者」から、ともに組織目標に向かう「パートナー」へと進化させることができます。フォロワーとしての役割を攻守両面から発揮し、リーダーの仕事に深くコミットすることで、一人のビジネスパーソンとして大きなやりがいを見出していけるのではないでしょうか。

まとめ

後編は、どのようなフォロワーのタイプがリーダーの良き「パートナー」になれるのか、フォロワーの考え方や行動に基づく4つのタイプを解説します。また、リーダーへの支援力や提言力を磨き、フォロワーとしてさらに成長するにはどうすればよいかについてもお伝えします

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