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ENERGY vol.08(2022年夏号)掲載

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パーパス経営の勧め ~活力が欲しい組織の処方箋

パーパスは「天命」、超自然的な使命

昨今、パーパス(Purpose)やパーパス経営という言葉をよく目にする様になりました。一般的な解釈として、パーパスとは、「企業固有の存在意義、企業固有の使命」とされていますが、私はパーパスを「天命」、超自然的な絶対の存在である「天」からの使命であると解釈しています(この「天」は「社会」と読み替えていただいても構いません)。

ブレイクダウンすると、「この世の中をより良くするために、天(あるいは社会)が自社に期待していること」「自社が企業として天(あるいは社会)から生存を許されている理由」と考えています。

ビジョンは自ら定義した「ありたい姿」であり、ミッションはその実現のための「ロードマップ」

ビジョンやミッションと似ているなと感じられるかもしれません。「ビジョン」とは、組織自らが考える「ありたい姿」、「見られたい姿」です。目指している姿を具体的に表現するために、自社がどうあるべきかを自ら定義していたものと解しています。

また、「ミッション」とは、ビジョンを実現するためにやらなければならない仕事です。つまり「ビジョン」を行動に移す具体的なロードマップと考えています。

パーパスを組織マネジメントに活用する

パーパス、ビジョン、ミッションは、人や組織によって使い方が多様ですが、その差異を議論するのは建設的ではありません。それより、経営者やリーダーの皆さんは組織運営の円滑化や企業成長に活用することをお勧めします。以降はパーパスの組織マネジメントにおける使い方を解説いたします。

組織において責任や権限は常にあいまい

リーダー(もしくは経営者)の最も重要な仕事の一つは、適切に部下やメンバーに仕事を割り当て、自らの代行者として判断・実行するための権限を与え、円滑に事業の運営と成長を図ることです。しかし、これがなかなかうまくいきません。

新たに発生しうる業務を想定した上で、ジョブディスクリプションを書き、権限を与えるのは不可能です。よって、仕事の責任範囲や与える権限は常にあいまいにならざるを得ません。

あいまいな仕事を拾うことが本来の仕事

想定外の事態が発生する中で、部下やメンバーが「自分の仕事はジョブディスクリプションで記載された仕事だけ」とし、行間に落ちるあいまいな仕事を自らの職務として拾っていく意識がなければ、ビジネスチャンスの喪失、非効率の発生、大事故などが頻発しかねず、成長はおろか安定した事業継続もできません。

「あいまいさ」に打ち勝つためにパーパスを活用する

問題は責任や権限が明確でないところで発生します。それをカバーするには、起こりうる事象を自らの職務と捉える、いわば「あいまいさに強い人材の集合体」に組織を変えていく必要があります。

そこでパーパスの出番となります。パーパスを明確にし、組織に浸透させれば、個々の社員があいまいな事に対し、自分事として適切な判断、対応ができる様になります。

パーパスは職務権限を越える上位概念

仕事を金銭的な報酬を得る手段とだけ捉えると、明文化された仕事以外には果たす責任がなく、余計なことに手を出さないのは至極当然だと思います。

一方、パーパス実現のために自らの仕事があると捉えると、責任を果たす必要があると考え、発生するどんな事も自分の職務とし、迷いなく関与することが当たり前になります。この様にパーパスは明文化された職務権限を埋め、上位概念として機能します。

自然発生的なパーパスがある

インソースのパーパスは「スピード感を持って社会課題を解決すること」です。これはメンバー全体の気持ちや欲求が事業の中で形づくられ、だんだんと具現化されてきました。当社に集まって来るのは、人に喜ばれることをするのが好きと考える人材ばかりですが、そうしたメンバーが一緒に働く中で、なんとなくできあがったものです。

当社では、社会課題の解決というパーパスを共有することが一体感の醸成、働く意欲向上につながっています。また、パーパスが存在する事で、自分事で判断ができたり、困難な課題にチャレンジできるのだと感じます。

パーパス実現が仕事になると組織活力は増す

明文化されているかに関わらず、パーパスはあらゆる組織に存在すると考えます。

リーダーの皆さんは、改めて自社のパーパスを感じ、それを言語化し、メンバーに伝え、パーパス実現こそが仕事であると宣言するべきだと思います。働く理由がシンプルに統一できれば、組織のベクトルが揃い、組織の活力は強化されます。活力が欲しい企業は今すぐでもパーパスを中核にした経営に移行すべきです。

ジョブ型雇用導入の前にパーパスの浸透を!

昨今、ジョブ型雇用の議論が盛んですが、導入前にパーパスの明文化、組織への浸透を急ぐべきだと考えます。

パーパスが職務における判断基準の最上位概念であることが浸透すれば、あいまいな仕事を『私の職務の範囲外です』と言って、明示された好きな事だけやればいいと考える、間違った"ジョブ型大好き社員"が発生することが防止でき、本来の意味でのジョブ型雇用実現に近づきます。

文/舟橋 孝之

インソース 代表取締役執行役員社長。神戸大学経営学部商学科卒。三和銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。システム開発部門や個人向け商品開発を担当。写真関係のベンチャー企業を経て、2003年に社会人教育事業のインソースを創業、2016年東証マザーズ上場、2017年東証1部上場、2022年プライム市場移行。インソースは上場後5年間で売上2.5倍、営業利益5倍、株価15倍に成長。

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