30
ダイバーシティ推進の目的を改めて考えて決めることです。
以下の3点について見直してみましょう。
1.組織として目指す目標を明確にし、課題を洗い出す
2.自組織の人材と、その人材を取り巻く環境の現状を把握する
3.個々人が「自分もダイバーシティの一員である」ことを
自覚するよう促す
ダイバーシティ推進に関する取り組みは、各組織さまざまです。「男性管理職のマインドは変わってきた。今度は女性自身のマインドチェンジが必要だ」という組織もあれば、「女性活躍は浸透してきたから、次は障がい者雇用だ」という組織もあります。昨今インソースに寄せられるご相談内容も、「身体障がい者はこれまでも働いていたが、精神障がい者を受け入れることになった。どうしたらいいか」「LGBTの社員がいて、対応に迷っている。アドバイスが欲しい」というような具体的なものが増えてきています。
ダイバーシティをさらに推進するには、改めて「今後、どんな組織にしていきたいのか」をイメージすることが大切です。
組織の目標を明確にしたうえで、「何が今、課題なのか」「その課題をどのようにクリアしていくのか」を洗い出していきます。また、組織のトップの覚悟も必要です。ダイバーシティ推進は経営層の本気度と覚悟が問われます。制度や働き方を見直す際には、経営層がどのような決断を下すのかが非常に重要だからです。「世間がダイバーシティ推進が大事と言うから」「法律で決まったから」といった受動的な理由ではなく、「こういう組織にしていきたいから」「ダイバーシティを推進すると、これだけの利点があるから」という能動的な姿勢で取り組みましょう。
一方、組織の視点で考えるとともに、組織で働く人材と、その人材を取り巻く環境を把握しておくことも肝要です。性別や障がいの有無、年齢や国籍、宗教観などによって、活躍する機会と与えられる可能性に差異がないか、阻害要因について調べます。一部の層の固定観念が阻害要因になるかもしれませんし、単にダイバーシティに関する正しい知識を持ち合わせていないことで、無意識に不用意な発言・行動を取り、周囲のモチベーションを下げる人がいるかもしれません。「誰が困っているのか」「誰が本領を発揮できていないのか」「何がその要因なのか」を洗い出しましょう。
そのためには、各現場でヒアリングを実施し、「すべての人材が活躍の機会を均等に与えられているかどうか」「働きやすさ、働きにくさについて意見を交わせる雰囲気が職場にあるかどうか」について確認することを推奨します。
「ダイバーシティとは、これまで活躍してきた男性に対して、少数派、マイノリティと呼ばれる人たちのために行うものである」と思う方がまだ多いのが現状です。女性、障がいのある方、外国人、シニア、LGBT...、様々な切り口でダイバーシティが語られています。しかし、なかなかこの人材リストに挙がらない「男性」や「健常者」もまた、間違いなくダイバーシティの一員です。ダイバーシティをより推進していくには、「男性」「健常者」をはじめとした全ての働く人が、“自分事”としてダイバーシティを考えていく必要があります。なぜなら、ダイバーシティ推進は、誰かのためではなく、自分のために取り組むものだからです。たとえ、「今の自分」ではなかったとしても、「将来の自分」のために取り組んだ方が良いものです。
例えば、私たちは今日は健常者かもしれません。しかし、明日は障がい者である可能性があります。仕事の帰り道に交通事故に遭って身体的な機能を失うこともあります。また、ある日突然、経営トップが代わり、後任が外国人に代わる可能性もあります。来年の新入社員に外国の異文化出身者が混じっていることもあり得ますし、定年退職を迎えた方が新たに同僚に加わることもあり得ます。なにより、私たちは日々、年齢を重ねていて、いずれは自身がシニア世代になります。
つまり、10年後に、自分が今と変わらずに、また今以上に活躍できるように、そして組織が今まで以上に発展していくために、その準備をすることもダイバーシティのひとつです。優秀な人材の確保も、多面的なリスク管理も、誰にとっても働きやすい職場作りも、すべては「自分のため」につながります。
この意識を組織全体で醸成することが、これからのダイバーシティ推進には欠かせません。
ぜひ、長期的な視線で、ダイバーシティ推進を考えていきましょう。
組織は人の集合体です。働く人が全員で、「自分のため」「隣にいる人のため」「将来、活躍する誰かのため」に意識を変え、行動を変え、風土を変えていくことで、きっと組織は多様化していきます。
インソースでは、ダイバーシティ推進の目的とは「組織が今後も維持存続でき、さらなる発展を実現するために、個々人が最大限にパフォーマンスを発揮して、組織貢献ができるようになること」ではないかと考えています。その結果、多面的にさまざまな立場の視点でリスクを洗い出せ、新しいマーケットが開拓でき、コンプライアンス遵守の基盤が築かれることにつながります。
目的を改めて掲げ、「社員・職員全員が同じ方向を目指して組織貢献できるようにすること」。これも人事ができるダイバーシティ推進のひとつです。