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認知的徒弟制

「認知的徒弟制」とは、親方と弟子による伝統的な職業技術訓練のプロセスを認知的に理論化した教育法で、1980年代にアメリカの認知学者によって提唱されました。知識の詰め込みではなく、弟子(部下)が親方(上司)の仕事のやり方を見よう見まねで実践することから始め、最終的には自分で判断しながら自律的に仕事ができるようになる方法として、企業のOJT指導などに活用されています。

認知的徒弟制は、一般的には以下の4つのステップで実行されます。
① モデリング (modeling)
熟練者が手本を示し、初心者は実際に見て仕事を把握する
② コーチング (coaching)
初心者のレベルに合った課題を与え、手本通りにできるようヒントや助言を与える
③ スキャフォールディング (scaffolding)
初心者が一人立ちするための「足場かけ」として、熟練者は初心者ができないことにだけヒントを与え、あとは一人でできるよう自立を促す
④ フェーディング (fading)
習熟度に従って段階的にヒントを減らし、最終的に足場を外して一人立ちさせる

始めは初心者でも、その共同体の正規(正統的)メンバーとして、周辺部の仕事から次第に参加率を増やし、最終的には中心的な役割を果たすまでの過程を「学習」として捉える考え方を、「正統的周辺参加(LPP: Legitimate peripheral participation)」と言います。この正統的周辺参加を現場で実践するためのプロセスとしても、認知的徒弟制のステップが参考になります。

初心者、つまり部下が自身で考え行動できる自律したメンバーとして、いち早く自立を果たせるようになるには、上司の適切な関わり方がカギを握っています。上司は部下の仕事をよく観察し、何ができて何ができないのかをよく見極めながら、全てを教えるのではなくヒントを与えて部下に自分で考えさせる習慣づけをすることが、即戦力化への近道です。そのためには、部下の自発的な行動を促す指導方法であるコーチングや、部下の気持ちに配慮しつつ言いにくいことを伝えるアサーティブコミュニケーションなどのスキルを上司が身につけておくと役に立ちます。

認知的徒弟制は上司と部下との長期にわたる「二人三脚」です。しかし、かつての徒弟制のように、上司が「俺の背中を見て覚えろ」と叫ぶだけではイマドキの若い部下はついてきません。理にかなった部下指導スキルも必要ですが、上司が忘れてはならないのは「熱意」と「愛情」、そして「忍耐」であることを付言しておきます。

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