インソースグループには、「LGBT」であることをオープンにしている社員が、複数名働いています。(参考リンク:数字で見るインソース~社員数データ)
今回はその中の一人に、実際に体験した「アンコンシャス・バイアス(無意識のバイアス、固定観念、決めつけ)」に関する出来事を語ってもらいました。
ぜひ他人事と考えず、明日は我が身という気持ちで、お読みいただけますと幸いです。
数年前の蒸し暑いある日のこと。
セミの鳴き声を窓越しに聞きながら、私は保険の営業を受けていました。営業担当の方は、涼しげな表情の男性でした。
営業担当「○○さん、今28歳ですよね。保険にはまだ入られていないとのことですが...」
私「そうなんです。いまいち、ピンとこなくて」
営業担当「では、今後の人生を書き出してみましょう。現在28歳男性で...例えば3年後、31歳にご結婚なさったとします」
私「はぁ」
営業担当「33歳で第一子、35歳で第二子が誕生したとして...当然子供が生まれると、お金がかかりますよね」
営業担当の男性は、慣れた手つきで、サラサラと紙に数字と矢印を描いていきます。
営業担当「養育費がどのくらいかかるかご存知ですか?例えば、中学は公立で、高校は私立に...」
ここで私はこらえきれなくなって、得意げに話す相手の話を遮りました。
私「すみません、お話を遮ってしまって。私、ゲイなんです。ゲイで、子供を作る予定はありません。なので、養育費はゼロです」
営業担当「...え?」
私「すみません...(苦笑)」
そう、私は実は「ゲイ」。つまり、男性を好きな男性です。
見た目はいわゆる"普通の男性"なので、営業担当の方は気が付いていませんでした。おそらく、可能性すら考えていなかったと思います。
これが、私自身が実際に体験した『アンコンシャス・バイアス』による不具合です。『アンコンシャス・バイアス』とは、日本語でいえば「無自覚の偏見」や「無意識の思い込み・決めつけ」のことです。
「30歳前後の男性なら、きっと結婚を考えているだろう」
「子供は2人くらい欲しくて、私立の高校に行くことも考えるだろう」
「養育費に不安を持てば、貯蓄型の保険にも興味が出てくるだろう」
統計上は、多くの30代男性に当てはまることかもしれません。しかし、目の前にいる相手がそれに該当するかどうかは、わからないのです。
もし決めつけや思い込みがなければ、状況は違っていたかもしれません。
「○○さんはどんなプランをお考えですか?」
「○○さんはどんな保険をお望みですか?」
と耳を傾ければ、全く別の切り口で提案ができたかもしれません。つまり『アンコンシャス・バイアス』を取り除くことは、お互いにメリットがある円滑なコミュニケーションや、ビジネスのチャンスを広げることに繋がるということです。
ところがやっかいなことに、『アンコンシャス・バイアス』は日常のそこら中に転がっています。例えば次のような、もっと複雑なケースはどうでしょう。
ある日、課長が帰社するなり、話し始めました。「今日行ったクライアント先で対応してくれた担当者がホモっぽかったぞ。なんかなよなよして、気持ち悪かったんだよな~」
これを聞いた部下たちは、課長の顔色をうかがいながら、うまく話を合わせて笑っています。しかし、新入社員の一人がその会話を聞き、顔を曇らせています。
こんな状況のとき、どのように対応すべきでしょうか。
「新人がもしかしたらLGBTなのかも...」
「だったら、あまり軽率に笑わない方がいいかも...」
と、新人への配慮を考えることは、もちろん大切です。
しかしもっと深く考えると、この「ホモっぽい」と笑った課長自身が、ゲイであるかもしれません。
「うちの職場は、LGBTに優しい職場だろうか?笑ってくれるだろうか?カミングアウトできるだろうか?」それを試すために、自らLGBTで笑いを取ろうとしている可能性もあります。その場合、例えば「課長、私はそれ笑えません」と毅然とした態度で明言すること自体が、課長の希望になるかもしれません。
職場内のよくある会話でも、『アンコンシャス・バイアス』を取り除いて考えると、互いの感情や関係性を考慮した立ち振る舞いが求められる難問となります。ただ、この難問は一つひとつ乗り越えることで、多様な人材の「働きやすさ」を生み出し、誰もが気持ちよく働ける「風通しの良い職場づくり」にもつながる鍵となります。
今回は例としてLGBTを出しましたが、「最近の若手社員は...」「子育て中の女性は...」など、あらゆるところに『アンコンシャス・バイアス』が潜んでいます。無自覚の偏見を持つこと自体は避けられなくても、それが"ある"こと自体を認識し、悪影響を及ぼさないよう注意をしておく必要があります。
本記事が、まずは「『アンコンシャス・バイアス』というものがあるんだ」と知ること、そして多様な視点で捉えることの重要性について、少しでも考えるきっかけとなれば幸いです。
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