世の中の流れが速く、VUCAの不確実な時代といわれる今、働きながら将来に不安を感じたり、変化が激しく次に何をすればよいかわからなくなってしまったりということは少なくありません。
一時的な立ち止まりは仕方のないことですが、それが長期化するとキャリアプラトーという停滞状態となり、本人の成長が止まったり、悩んで離職してしまったりという事態が発生します。
今回はそのようなキャリアプラトーのリスクを防ぐために、その概要を理解し、仕事の意欲・キャリアの停滞を生み出さない方法についてみていきたいと思います。
①キャリアプラトーの定義
プラトー(plateau)は高原・台地と言う意味ですが、階段の踊り場のような停滞状態のことを比喩する場合もあります。そのプラトーの意味を含んだキャリアプラトーは、「今後のキャリアで現在以上のポストに昇進する可能性が低く、停滞状況にあること」を指します。
このキャリアプラトーについて、アメリカでは、1960年代からベトナム戦争で景気が低迷したことを機に管理職が削減されキャリアプラトーの問題が発生しました。その後、さらにベビーブーマー世代による労働者の増加や、ダイバーシティの拡大による女性やマイノリティの管理職昇進競争への新たな参入という事態を受けて、昇進の門がさらに狭まり、キャリアプラトーが拡大しました。
日本でも、1970年代後半からの高度経済成長から低成長への転換を契機として、キャリアプラトーの問題が発生しました。1980年代のバブル経済期に一時的に沈静しましたが、また1990年代のバブル崩壊により、リストラや組織のフラット化により管理職のポストが減少し、キャリアプラトーの問題が再発しました。さらに近年、団塊ジュニア世代が管理職への昇進の時期を迎え、管理職のポストがさらに不足するとともに、ライン管理職(部下持ちの管理職)ではない管理職層(担当部長、担当課長と呼ばれる層)も増えています。 このように、日本でも1990年代以降、キャリアプラトーが組織内で問題になっています。
②昇進とキャリアプラトーとの関係
キャリアプラトーは昇進と深い関係にありますが、そもそも昇進とは、管理職(課長)以上に職位が上がることを指します。同様の意味で「昇格」がありますが、これは職階(1級・2級、A1・A2など)が上がることを指します。
現在は働き方や人々が求めるキャリア観が多様化していますが、以前は、医者や弁護士などの高度な伝統的な専門職を除いて、部長や課長になることが出世の代名詞でした。
また、現在でも、日本では就職というより「就社」という意識が強く、特定の職業人になるというよりも、特定の会社の社員になるという意識が強い傾向にあります。そのため、組織名や部長や課長というポスト・職位が自分の職業人のアイデンティティとして、また人から評価される基準として一般化しています。
このように以前は、昇進は働き手にとって大きな意味をもっており、その道が閉ざされることがキャリアプラトーの状態になることに直結していましたが、現在はキャリア観や仕事に対する価値観が多様化しているため、キャリアプラトーが発生する要因も、昇進だけでなく、
・・・など多様化しています。
さらに、キャリアプラトーの具体的な状況について、種類ごとに詳しくみていきます。
(1)能力・業績・ポスト
上記のように、①は「能力・業績は十分であるが、ポストがない」、②は「能力・業績が足りておらず昇進の機会が与えられない」、③は「能力・業績的に昇進に手が届かないことはなく、ポストもあるが、本人に自信がない」などの理由でキャリアプラトーが発生します。
①はキャリアプラトーの状態が続くと、離職が発生する可能性が高まりますので、有能な人材を失うことにならないように、可能なら、報酬を上げたり、本人がやりがいを感じる仕事を用意したりするなどの対策が必要となります。②はまずはスキルアップが必要であり、③はチャレンジするマインドなどを持つように上司からの指導が必要となります。
(2)ワークライフバランス
現在は、上記の④・⑤のような、本人のワークライフバランスの考え方と昇進に随伴する条件が相容れず、キャリアプラトーが発生しているケースもあります。そうしたケースが多い場合は、人事制度や勤怠の在り方など組織の制度や規程の変更なども必要となりますが、チーム内の個別ケースの場合は、上司が本人と1対1面談をして、本人の働き方や制約(育児、介護などで働ける時間が制限されるなど)についてしっかりと話し合い、チーム(上司)・本人双方で最適な在り方を考える必要があります。
(3)同一部署で長く勤務している
⑥~⑧のように、同じ部署で長く勤務すると、キャリアプラトーや属人化の問題などが発生し、あまり良いことはありません。組織でキャリアパスをしっかり示してジョブローテーションを促したり、上司と部下で定期的に(半期に一度の評価面談などで)異動も見据えた今後のキャリアについて話すことが必要になります。
また、組織や本人がスペシャリスト育成を目指しているなら、組織でキャリアパスやスキルマップなどを整備するとともに、今後、どのように自分の知識やスキルを継続的にアップデートしていくか(アンラーニング)などをしっかり上司と部下で話し合う必要があります。
(4)キャリアの向上
⑨・⑩は特に優秀な意識高い系の人材が陥りやすいキャリアプラトーです。自分のキャリアに対する考え方とキャリアパスなどの会社の方針が合わなくても停滞状態が発生してしまいます。
先ほどもお伝えしましたが、そのような事態にならないように、上司と部下で定期的にキャリアについて話し合う必要があります。
これまでみてきたように、キャリアプラトーは、大きく「昇進に関わる停滞」と「本人の仕事の意欲・キャリアの停滞」の2つに分かれます。
前者については、昇進が停滞しないように管理職のポスト(職位)を十分に用意できれば良いですが容易ではありません。そうすると、キャリアプラトーの問題は、現実的には、後者の「本人の仕事の意欲・キャリアの停滞」を防ぐことが有効な施策となります。
そのような形での具体的なキャリアプラトーを防ぐ取り組みとしては、
という上記の4つの施策が有効と考えます。
上記の施策の詳細については、下記のページに詳しく解説しておりますので、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。
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