現代のビジネスのキーワードとして「スピード」「変化」「イノベーション」などの単語が挙げられます。市場の変化が早くなり、複雑化している実感を持つ方も多いのではないでしょうか?市場が変化し、 そこに対し供給するもの・供給の方法が変わるのであれば、日々の仕事の進め方にも変化が生まれてしかるべきです。変化の激しい現代のビジネスで、組織としても、個としても勝利を手にするために、 現代に適応した仕事の進め方を考える必要があります。
結論からいうと、PDCAは現代でも十分有用な管理における考え方です。
PDCAは仕事をするうえで基本的な考え方であるために「新人・若手向けの考え方」であると考える向きもあるようですが、実際はプロジェクトを預かる管理職が業務単位でPDCAを回すなど、
担当業務の難易度にかかわらず有効な手段です。
また、「変化の激しい現代において、現場で活かすことのできない考え方」だという声も聞かれます。確かに、突発的な事象に対しては「計画」というフェーズがそぐわないこともあるでしょうし、 次から次へと仕事が降りかかる中で悠長に「振り返り」などしている暇はないかもしれません。一方業務の山場を乗り切ったら、次の山に備えた振り返りや改善が必要になります。 変化が激しい現代だからこそ、変化に対し後手に回らないように振り返りと次回の計画を立てる必要があるのです。
「PDCAはもう古い。今はOODAループだ」という話を耳にすることがあります。
OODAループとは
O:Observe(観察)
O:Orient(方向付け・情勢判断)
D:Decide(決断)
A:Act(行動)
のループを指します。もとは米空軍で提唱された行動様式で、現状に合わせた最適な判断を繰り返すことに特徴があります。
状況の把握をし、何をするか決め、行動に移すという一連の流れは当たり前に見えますが、慌てると観察を怠ったり、判断をせず漫然と行動してしまったり、 意思決定を他者にゆだねたり、場合によっては行動を怠ることもあるかもしれません。戦闘機に乗っている時に何かを欠くのは文字通り命取りになりますが、 これがビジネスで応用されるようになっている背景には、スピード対応するためだけでなく、一社会人として相応の責任を持つことの重要性が現場と管理部門の双方で認識されているからかもしれません。
結論から言えば「両方」です。PDCAは管理における考え方、OODAは行動における考え方であり、両者は置き換わるような性質のものではありません。
スポーツの場面で考えてみます。例えば卓球。ラリーの最中にPDCAを回すことはできません。
来た球を打つ。その繰り返しです。ここで活用されているのはOODAループです。球や相手の位置を観察し、どこに打つべきか瞬時に判断、決定し、行動に移します。
そして、どちらかに点が入るなどし、ラリーが終わるタイミングではPDCAを回します。「右でなく左に打つべきだったか」「腕をどのように振るべきだったか」「もう少し丁寧につなぐべきだったか」など、 直前のラリーを振り返り次のラリーの戦略を立てます。PDCAにはもっと大きな単位もあり、1つのセットが終わるとコーチと一緒に振り返り、次の作戦を立てます。1つの大会が終われば、 チーム単位で振り返り、次の作戦を立て、練習計画を作成します。
PDCAとOODAループは単に状況に合わせて使い分けるだけでは不十分です。OODAループの「判断」の拠り所となるのが、日ごろからの決まり事です。
・廊下で人とぶつかりそうになった時に右に避けるのか、左に避けるのか
・受けた電話がクレームだった時にまず謝るのか、自社の正当性を主張するのか
・朝起きて体調が悪かった時に欠勤連絡を電話でするのか、メールでするのか
・大きな地震が起きた時に机の下に隠れるのか、WEBで地震情報を確認するのか
その場で「正しい」とされる判断を行うためには、組織方針を理解し、方針に基づくルールを理解し、実際に行動できるような訓練を行うことが重要です。 方針やルールの明示がないまま、現場に判断から行動までを任せるのは丸投げと変わりません。個々が責任感を持ち職務を遂行することと同様に、組織として業務全体に責任を持つ意識が不可欠です。
軍事学者のクラウゼヴィッツは、戦場において完全に状況を把握できるほど情報が揃うことはなく、常に流動的で不確実なものであるとして、このような状況を「戦場の霧」と呼びました。 現代における変化の激しいビジネスの世界も、そんな「霧」に覆われた不確実なものであり、暗中模索の状態であると言えるでしょう。
PDCAもOODAループも、そんな「霧」を抜けるための「手法」です。双方の良い点、使い方を見極めて活用することで、それぞれの組織にとっての「勝利」、すなわち目的を達成するための道筋が見えてきます。 PDCAもOODAループも充分に理解して使いこなし、勝ち残るための力とすることが、いま求められています。
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