研修を語る

業績管理研修を語る

2024/05/21更新

業績管理研修を語る ~顧客別・事業別収支分析と資本コスト経営入門

資本コストを超える利益目標を達成するための業績管理

―「業績管理」に関しては、非常に範囲が広い印象があります。書類の読み方に特化したものや、目標数値の設定に絞り込んだものなど、目的によって研修の選び方も変わってくると思うのですが、この研修では具体的に何が学べるのでしょうか

確かに、業績管理を掲げた研修にはさまざまなものがあります。中にはジャンルの異なる要素が混在している講座もありますが、本研修で取り上げるのは副題にあるように「顧客別の事業別収支分析」と「資本コスト経営」です。

資本コストというのは、銀行からの借り入れや株式調達などによる資金調達のコストのことです。借入金には利息が発生しますし、発行した株式には配当金支払いが伴いますので、資金を調達するのにもコストがかかる、という考え方です。企業は資本コストを払って事業活動をして利益をあげる存在ですので、資本コストを超える利益を達成する必要があります。本研修では、その第一歩となる損益表の分析手法や、どうすれば収支の改善ができるか、利益率を向上させるための計数管理手法を習得します。

―業績管理で数字の話というと、KPIやKGIなどを想像する方も多いかもしれませんが、それとは方向性が違うということですね

はい、それらも業績管理には概念として必要なものではありますが、あくまでも本研修の主眼は計数管理能力です。特徴としましては、取引の全体を見るのではなくて、顧客との取引単位や事業単位など、個別に具体的な数字を分析していく点が挙げられます。

これは、本研修が「企業全体を見る経営の立場から考える」ことをベースにしているためです。例えば、全社の取引高全体では目標に5%足りない状況であっても、顧客別に見ると20%プラスで達成している取引先がある一方で、マイナス50%の取引先が利益率を下げている場合があります。このような個別の数字を把握することで、マイナス分に着目した問題解決策を打ち出せるようになります。

―個別の収支に的を絞り込んだ、実践的な内容なのですね

財務系の研修の中には、「学んだ知識をどう使うかは受講者任せ」というものが少なくありません。決算書の読み方など、基礎的な講義が多いという理由もありますが、仕事の改善に結びつけるところまでは、フォローしていない研修が大半ではないでしょうか。しかし、この研修では「自部署の損益をどのように見るか、損益改善をいかに進めていくか」という点に狙いを定めています。

―単なる数字の見方や決算書の読み方を習うだけではなく、それらを「どう使いこなすか」というところまで身につく研修、ということですね

その通りです。具体的なアクションで、踏み込んでお伝えするというのが、インソースの研修全てにおいて共通している特徴です。

設備投資の多い業種の事業責任者には、必須の知識です

―こちらの研修のレベルですが、収支分析などを行うのであれば、やはり管理職が対象でしょうか?

そうですね。企業規模に関しては、特に条件を設けてはおりませんが、取引に際して「撤退の判断ができる立場である」というのが、受講の基準ですので管理職が対象です。単に管理業務をしているというだけではなく、その事業の全体を任されている方ですとか、拠点の収支に責任を持つ立場の方に適した内容といえます。

―どのような業種の方が多いでしょうか?

さまざまな業種の方が受講されていますが、設備投資の多い業種の会社には必須の知識だと考えます。特に、製造や物流など拠点を持って事業を行う業種の企業ですと、拠点に設備投資をした上で販売や値段交渉を行うことになりますから、本研修の学習内容は収益確保のための判断軸となります。

したがって、営業部長や工場長、及びその候補者の方々に、ぜひ受講いただきたいと思います。また、経営企画や管理会計の業務を扱う方なども、収支に関する知識がないと事業責任者との対話ができませんので、学んでいただく価値は大いにあると思います。

―この研修を受講するきっかけは、どういった理由が多いのでしょうか

トップダウンで受講される方がもっとも多いです。従来、営業利益を評価する際は、損益計算書を基準にするのが一般的だったのですが、2014年に経済産業省から「伊藤レポート(「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト)」が公開され、資本コスト経営が重要という認識が急速に広がりました。

参考:経済産業省「伊藤レポート」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/itoreport.pdf(最終アクセス日:2022/5/10)

これを受けて投資家の着眼点も変化し、昨今は大企業もこれに倣っている状態です。事業責任者たちが資本コストをベースとした数字を理解できないと、利益率の良し悪しを評価できませんので、会社の指名のもとで研修受講される場合が大半です。

経営者の目線から、計数管理能力を修得できます

―この研修を受講すると、どのようなスキルや知識が身につくでしょうか。受講の代表的なメリットをお教えください

一言で申し上げると「経営者目線での計数管理能力を習得できます」ということに尽きます。管理職の多くは、どうしても自部署の数字であるとか、毎月の利益を追いかけるので精一杯になりがちです。しかしこの研修では、短期的な利益のみならず半年~1年間の長いスパンでの収支を見られるようになります。また、経営者や株主・投資家の重視する、投資した資金と利益の比較も理解できます。

―それが「経営者目線」ということですね。では、具体的な内容についてですが、最初のポイントは何でしょうか

はい。財務諸表の基礎知識を既にお持ちである前提で、「変動費と固定費」という損益改善のキーワードをまずきちんと理解していただきます。変動費と固定費に着目したコスト分析が収支分析の基礎であるためです。また、減価償却についても、資金の動きを伴う項目であるため正しく認識していただくようにお伝えしています。

―わかりました。そして続く章でキーワードを具体的に理解するための演習が続くのですね

その通りです。基礎知識として確認した「変動費と固定費」の分析、具体的には取引の撤退判断の考え方を演習します。取引を撤退した場合、変動費はゼロになりますが固定費は即座にゼロにならない、という点がポイントです。

常識的に考えれば「赤字の事業はやめたほうがいい」と思いがちですが、変動費・固定費という概念で考えると、取引撤退により赤字幅がさらに膨らむことを避けるために取引を継続した方がよい、というケースが出てきます。

―儲からない取引から、どういう基準で退くかという判断は難しそうですね

実際のビジネスにおいては、モノや人などのやり繰りがあり総合的な判断が求められますが、根拠のある判断軸の基本として数字での判断軸を持っていただきたいです。
演習では、AからDまで4つのサンプル取引について、収支を比較しながら、変動費や固定費について分析し、取引継続・撤退の判断をしていただきます。

値上げの重要性や、ROICの概念も学べます

実は、肝になるメッセージの一つが「値上げの重要性」です。

―値上げは実現すれば有難いですが、昨今ではなかなか厳しいですよね。コスト削減ばかり叫ばれている現場の方も多いと思います

そうですね。お客さまとの交渉はハードですし、値上げをしたくてもしづらいという状況の方は多いと思います。もちろん、コストダウンは徹底すべきであり、実際にどこの企業でも既に実行しているのではないでしょうか。しかし、目標の利益率を考えた時、費用の節減には限界があります。

そういう場合、より利益率の高い取引を新規開拓していくというのが、拠点長や部門長などの使命となります。計数管理をしていくと「値上げの効果が大きい」ということを痛感しますので、値上げしても取引継続となる関係を築く必要性を理解することができます。研修の中でも顧客との関係づくりや顧客価値を高める方針を考えるワークを設けています。

―収支分析と値上げの重要性は密接につながっている感じですね。一方、資本コストの話は少しジャンルが違うような気がします

はい、資本コスト経営のキーワードとして本研修では、「ROIC(Return on Investment Capital:ローイック)」について解説します。ROICとは利益指標のひとつで、投下資本利益率とも表記されます。昨今では資本コストを学ぶ際に欠かせないキーワードになっており、本研修ではROICの概念を理解するとともに、あるべき目標を資本効率で考えましょうということをお伝えしています。

―業績管理の研修をインターネットで検索すると、たくさんの種類が出て来ますが、タイトルにROICを掲げているプログラムはあまり多くない印象を受けました

ROICに関しては、この研修の特徴的な部分かもしれません。「投下資本とは何か」という基本から始まり、どれくらいの投下資本利益率を出すべきか、実際に架空の事業所のROICと売上高営業利益率を計算していただきます。すると、けっこう皆さんショックをお受けになるのです。

―それはどうしてでしょうか

実はROICを用いると、従来よりも利益目標が高くなることが多いからです。受講者のなかには、既に会社でROICをベースとした目標設定を導入されているケースもありますが、まだまだ浸透していない会社も多いです。そんな方々が本研修で初めてROICを知ると、「今まで設定していた利益率目標では不足である」という事実を突きつけられるわけです。

―それはショックですね。次の日、会社に行ったら数字を見直さなくてはいけません

資本コスト経営という観点で、より高い利益率が必要であると理解していただく事がこの研修の目的です。そのため、「目標を達成するためにはコストの削減だけでは不十分である」「より収益率の高い取引や事業を行う必要がある」と、認識を新たにしていただけましたら、学習の効果が十分にあったということです。

専門の講師による、最新の知識習得が研修の魅力

―ここまでお伺いしてきた研修内容なのですが、業績管理ということ自体は会社で上司や先輩から教えてもらったり、自己啓発でもある程度は行われたりすると思うのですが、インソースで外部の講師から学ぶ最大のメリットはどのような点でしょうか

社内外の違いの最たるものは、発想や知識の差ではないでしょうか。例えば、「固定費と変動費を分析する」という発想を社内で習っていなければ、本研修を受講して初めて概念を知ることになります。本来であれば上司がわかっていて教えてもらえるのがベストですが、すべての会社がそうではありません。
資本コスト経営や収支分析などを知らなくても、自部署の成果が上がれば昇進は可能です。実際、拠点長などの立場になり責任が発生して初めて学ぶという方も結構いらっしゃいます。そのような方々が学習の入口として重点を学べるのが外部研修の特徴であり、具体的に詳しく学べる点でインソースの研修をお勧めしたいと考えています。

―すごく納得しました。教材を拝見しても、わずか1日の講座でこれだけの内容を、スムーズに理解できるように指導するのは、プロフェッショナルだなと感じます。このプログラムは内容が濃いのですが、特に工夫された部分はありますでしょうか

取引撤退の判断を学ぶ手法として、二段階のケーススタディを取り入れております。テーマとしては同じなのですが、比較的単純な事例を理解していただいた後で、より複雑な事例にステップアップすることで、段階的に理解を深められるように工夫しました。ここは重点的に学んでいただく部分ですので、どなたにもしっかり理解できるように注力しております。

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