研修を語る
2024/07/19更新
中途採用1年目研修を語る ~即戦力として活躍する
中途採用者のための、実践的な新人研修
―本プログラムの概要を教えてください
中途採用の皆さんは「即戦力」として期待されることが多いのですが、企業側が思ったほどの活躍ができていないケースもよく見受けられます。その原因の一つが研修の機会に恵まれないことです。入社時に基本的な研修をした後は、「経験者だからきっとできるだろう」との安直な思い込みで、すぐに実務に回されがちです。
しかしながら社会人経験者と言ってもその会社では新人と同義です。この研修では、中途社員が期待に応えようとして空回りすることのないように、即戦力として活躍するための心構えや行動のヒントをお伝えしています。
―業務フロー・情報収集・生産性が即戦力になるための三本柱であるとのことですが、このうち最も重きが置かれている要素はどれでしょうか
どの要素もお互いに関連しているのですが、いちばんボリュームを割いているのは業務フローの要素です。また、全体を通じてコミュニケーションに関しても多くの時間をかけています。
―タイトルに「1年目」とあるのは、入社直後の中途社員に向けた内容という意味だと思うのですが、入社から数年経過した社員でも効果が期待できますか
中途採用社員に即戦力として働いてもらうには、最初が肝心です。再就職後の心の持ちようやどんなところに気をつけるべきかなど、新しい職場でのスタート直後で「やる気に満ちている状態」の方へ向けて構成しています。ですから数年経過なさった方にはフィットしない可能性が高いです。2年目や3年目の方へは、その経験や役割に応じた別の研修をご用意しております。
業績の向上と同時に、定着率アップも目指す
―中途採用の社員と新卒社員、それぞれに向けた研修の決定的な違いはどこにあるでしょうか
いわゆる新人研修と呼ばれる新卒向けの研修では、社会人としてのマナーや一般常識から教え込む必要があります。しかし同じ新人でも中途採用であれば、一度その段階は通過していますので、この部分にはあまり触れないことが大きな違いです。あくまで現場ですぐに仕事ができるよう、先述の三本柱をメインとして実務に即した内容で進めていきます。
―中途採用の場合、ベテランの方や紹介などで、最初からある程度の役職に就いている方もいらっしゃいます。そのような社員も本プログラムの受講対象に含まれますか
ベテランの中途社員の方も受講いただく分には問題ないのですが、やや物足りないとお感じになるかもしれません。こちらの研修はどちらかというと若手、20代~30代くらいの中途採用者を想定していただくとよろしいかと思います。
―企業側がこの研修を中途採用社員に受けさせたいと思う理由や背景には、どのようなものがあるのでしょうか
組織にとってはせっかく採用コストをかけて人を雇うわけですから、すぐに活躍してもらわないと困りますし、短期間で辞められるとダメージが大きいです。特に昨今は転職が当たり前になっている時代ですので、業績の向上と同時に定着率のアップも狙いたいとお考えのようです。
職場では教えにくい「人間関係の整理」にも言及
―中途採用者向けの研修はたくさん存在しますが、その中でインソースならではの特色や、他にはないポイントを教えてください
業務フローの把握を掲げているところが、弊社ならではの特徴だと考えます。一般的な中途採用者向け研修では、タイムマネジメントや生産性の高い仕事の在り方について言及しているものが多いですが、即戦力として活躍するために「業務フロー把握」を明文化しているカリキュラムは少ないです。
―ワークや演習に関してはいかがでしょうか
2章(3)にある、「現在自身に任せられている業務のフロー図を作成する」というワークでは、実際に部署で取り組んでいる業務を洗い出して整理します。この部分は研修の肝です。また、中途採用の方でしたら皆さん日頃から実践されていることだとは思いますが、自分の仕事の優先順位をつける演習を後半に設けています。こちらもこの研修の核となるもののひとつです。
―「自身の身の回りの人を整理する」というワークも業務フロー作成のようなものなのでしょうか。中途入社の方には、人間関係の把握は重要なステップですよね
おっしゃる通り、非常に重要です。中途採用であっても指導役の方は付くと思うのですが、その方のお伝えになることが全てではないですよね。OJTを受ける側のお悩みにしばしば挙がる「人によって言うことが違うので混乱する」というお悩みはどの組織でも聞かれます。ですが立場や仕事内容が違えば発言も変わってくるのは当然です。
そういう中で情報や状況を正しく把握するためには、周囲の人の立ち振る舞いや関係性をしっかりと観察して、例えば「この上司にはこういう風に接する・この人から〇〇の情報を集めればよい」などのように、いち早く気づくことが肝心です。
―要領よく仕事を進めるためには重要なのに、なかなか表立って教えてもらえないことでもありますね
そうですね、まず教えてはもらえないのではないでしょうか。こういったものが他にもありますが、開発者を含めて弊社では中途採用を経験したメンバーが多いため、実体験の中から導き出した「本当に役に立つ情報」を盛り込んでいます。
採用側が中途採用者に求めることとは何か
―ではここからは各章のポイントについて、順にうかがいます。まず第1章は「中途採用者に求められること」がテーマですね。採用側の立場からすると様々な条件や希望など求めることはたくさんありますが、一方で採用される側では、これらを考えたことのない人も多そうですね
確かに自分では気づきにくい点かもしれません。中途採用で入社した方は、「活躍したい・今までの経験を生かしたい」という意気込みが強いですが、前の職場でのやり方を引きずってしまうことも少なくありません。これは前職の経験年数が長い人ほど顕著ですが、その経験を良い方に活かしながら新しい気持ちで臨んでもらう必要があります。1章は、中途採用者に適切な心構えを促す部分です。
―否が応でも即戦力となることを期待されると思うのですが、その他にも企業側が中途採用者に求めていることは何でしょうか
1番目が即戦力、2番目が「外の人の視点を活かしながら活躍する」ということです。例えば、新しく入社した会社の業務フローより前の会社の方が優れていると思った場合、外部から来た人間の視点で提案することで、組織の業務改善やサービスの向上に貢献できます。
毎日の業務は、ずっと組織の中にいる人からすると当たり前すぎて改善点を見つけるのはかえって難しいものです。外から入ってくる新しい考え方は、そういった社員にとって気づきを得るきっかけになります。中途採用の人には、そういう新風を吹き込む役割も期待されていると考えます。この点を機能させるために、先述の人間関係の整理をしっかり行い、上手に情報発信していくことが求められます。
―そうすると、業務を覚えるのと同じくらい人間関係をつかむことが大切ですね。続く第2章は、一番重要とおっしゃった業務フローについてです。先ほど前の会社のフローの方が機能的であれば提案した方がよいとの話でしたが、やり方にあまりに大きな差がある場合は、そのギャップに悩むケースもあるのではないでしょうか
そうならないために、いち早く組織の全体像を知ることが重要です。職場で業務の流れを教えてもらう際、自分の所属する部署や特定の部分だけではなく、会社全体がどのように動いているのかを把握することで、仕事をスムーズに進められます。
ただし、それは職場の方から必ず教えられることとは限りませんので、自分でつかみにいく必要があります。模索する最中に前職とのやり方の違いに気づくこともあると思いますが、全体像さえ捉えられれば改善点の提案やすでに自分の中にあるノウハウを新しい仕事に活かす方法も明確にできます。業務フロー把握に力を入れているのは、このためです。
今後は中途採用向けの新人研修実施が当たり前の時代に
―第3章は情報収集についてのパートです。働くうえでは非常に大切なことですが、これをうまくできるかどうかは個人の持つコミュニケーション力も大きく影響しそうですね
そうですね。新卒社員と中途採用の、いちばん大きな違いが出る部分でもあります。結論から言いますと、早く活躍したいと思っているならば、待ちの姿勢では何もできません。自分から積極的に情報を得られるように奔走する必要があります。
先ほども述べた人間関係の整理は、まさにこの情報収集スキルが集約される部分です。人間関係を整理して情報を集めているうちに「〇〇さんには先に話を通すべき・この提案は〇〇さんに相談しておこう」などのようにキーパーソンが浮かび上がり、より有利に仕事を進められます。
―最後の第4章のテーマは生産性ですね。全体のまとめにもつながる章の位置づけだと思います
この章ではタイムマネジメントを学びます。もう既に皆さん実践されていることが多いだろうとは思いますが、中途社員の方は入社直後から多くの仕事を任せられ、すぐに時間がないと感じるでしょう。そこで、この研修で改めてじっくりと業務の優先順位を考えていただくことが目的です。
―何事も情報整理が大切だということですね。この他にも中途採用の方に向けた注意点やアドバイスがありますか
どんなに前の職場で活躍できていたとしても、それを一旦リセットして、新しい気持ちで取り組んでください、とお伝えしたいです。また、自分の後に入社してくる人たちのために、何が残せるか考えられる人であって欲しいと思います。将来的に企業の価値を高められるように、自身の経験や情報が伝えられるマニュアルを作成しておくことも有効です。
―ひと昔前は新人研修というと新卒採用の方だけが受けるものというイメージでした。今は離職率が上がって恒常的な人材不足が組織の課題に挙げられていますから、第二新卒・中途採用者も辞めてしまわないための教育計画を準備するなど、何らかの対策を講じないといけない状況なのでしょうね。
そうですね。離職・転職・中途採用が当たり前に受け入れられる世の中になってきたのは事実です。社員側の辞めることに対する抵抗感も、薄くなっている時代ですので、業種や企業規模に関わらず離職防止対策は大きな課題と言えるでしょう。「採用したものの結局辞めてしまう」という残念な結果の原因になるのは、対象者側の能力ではなく、組織側の準備・体制の不備かもしれません。
―中途採用の新人研修は、今後スタンダードになりそうですね
そうですね、中途採用社員に対しても体系立てられた入社時研修を行っている企業は、既にあります。1日でも早く組織に馴染んでもらい、本当の意味での即戦力として活躍してもらうためには、企業側も「中途採用は何もしなくても実績を作れる」などと甘んじず、社員が実力を発揮できるような道筋をきちんと作っていくことが大事です。
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