研修を語る
2024/07/30更新
ChatGPT研修を語る ~良い回答を生む魔法の呪文?アイデア出しの必須スキルを上手に使うには
IT研修やプログラミングに強いPython学院チームの政田と井村が、本研修が生まれた背景や特色についてたっぷりと語ります!
ChatGPTの使い方を社内で共有したら
「研修として開発しよう!」の声が
―対話型の人工知能(AI)は、従来のAIには不可能だった自然な応答を可能にし、個人・企業において、文書作成やプログラミングなど幅広い分野で活用され始めています。
なかでも、2022年11月に公開されたChatGPTは、わずか5日で100万人、翌年1月には1億2千万人を超えるユーザー数を獲得するなど、世界でブームを巻き起こしました。
お二人はもともと、ご自身の業務でChatGPTをどう活用されていたのでしょう?
政田:
研修タイトルの仮案を10個作ってもらうとか、10分くらいでできるちょっとしたワークを考えてもらうとか、主にアイデア出しに使っていました。仮に得られたアイデアベースで方向性を検討できるようになって、企画系の業務効率がだいぶ上がりました。
井村:
私もChatGPTが一番得意なことはアイデア出しだと思います。一つのテーマに対して、ラテラルシンキングでどんどんアイデアを拡散させたい時など、インターネットのいろんなサイトの中から情報を拾ってきてくれるので重宝していました。
政田:
私が「業務効率化に使えるツールがありますよ!」と社内で展開したところ、「社内の共有だけじゃなくて、ぜひ研修として開発しよう!」という声が出まして。そこで、我々Python学院チームのメンバーが、テキスト制作チームと一緒に開発に携わることになったんです。
「魔法の呪文」を教えてくれる?
ChatGPT研修"基礎編"の中身とは
―それで生まれたのが
「ChatGPTのはじめ方研修~触って学び、明日の業務を効率化する」
ですね。
政田:
はい。巷で話題のChatGPTをまだ一度も使ったことがない、気になってはいるけどアカウントの登録まで至っていない、という方に向けた「基礎編」とも言うべきプログラムになります。
―1回も触ったことのない方でも本当に大丈夫?
政田:
大丈夫です。まずは講師と一緒にアカウントを作成するところから始めるのでご安心ください!そのあと、ChatGPTと会話をするような気楽な気持ちで、実際に質問を投げかけていただきます。
自分で打ちこんだ質問に対して、カタカタカタ......と自動的に回答が生成されていく様子は、初めて見ると結構インパクトがあるようです。
―分かります!私もちょっと感動しました(笑)
政田:
最初は何でもいいのでとにかく質問を入れてみていただき、さらに業務で使える質問ができるようになるところまでが、基礎編のゴールとなります。
―質問ってどんな風に入れてもいいわけではないんですか?
政田:
実際に業務で使い始めると、「もっとこういう回答が欲しいのに」「なんか物足りない......」という場面が増えると思います。実は、ChatGPTから欲しい回答を引き出すための"質問の仕方"があるんです。
例えば、質問者が期待する回答形式が曖昧だと、望む形式で回答を提供してくれません。回答の形式をあらかじめ指示する必要があります。
「10個の案を箇条書きで出してみてください」
「表形式でメリットとデメリットを教えてください」
「400字程度で教えてください」
といった条件を加えて質問することが有効です。
さらに、こうした条件を加えていくのに、あらかじめ質問のフォーマットがあると便利ですよね。研修では、必要な情報や条件を入力しやすい質問フォーマットや、効率よく欲しい回答を引き出すための「魔法の呪文」などもお伝えします。
―魔法の呪文とは必見ですね!無料版のChatGPTでも使えますか?
政田:
はい、すべて無料版で活用できるテクニックです。すでに受講された方からは、
「ChatGPTについて日々情報を仕入れていたが、実践を踏まえて新しい発見があった」
「既に活用していたが、呪文の部分がとても有用だった」
などの感想をいただいています。
基礎編を受講された方の声に応え、
派生研修も続々誕生
―基礎編を受講すると、これまでChatGPTを触ったことがなかった方も、業務でこう使えばいいのかというイメージが浮かぶようになりそうですね。
政田:
そうだと思います。プログラム終盤では、より普段の業務での活用がイメージできるよう、文書の作成やExcelと組み合わせた使い方について少し解説するのですが、「その部分をもっと詳しく聞きたい」とおっしゃる方もいました。
そのような声にお応えし、既にChatGPTを活用している方を対象とした、
ChatGPTを活用したビジネス文書研修~文書作成の新スタンダードを学ぶ(1日間)
ChatGPT×Excel研修~Excel初級者でもAIの力で使いこなす(1日間)
などの派生研修を開発しました。
ChatGPT×Excel研修では、関数の生成など初級者にはちょっと難しいExcelの操作方法をChatGPTに相談してみることで、スキル向上や時短につなげていただくことをゴールとしています。
また、Excelには慣れていてもハードルの高いマクロ作成についても、ChatGPTを活用することで作業の自動化につなげていただける
ChatGPT×Excel研修~知識ゼロからマクロを作る(1日間)
もございます。
―派生研修の中には「応用編」と銘打たれている研修がありますね。
ChatGPT応用編研修~プロンプトエンジニアリングについて学ぶ
「プロンプトエンジニアリング」とは聞きなれない言葉ですが、どういう意味ですか?
井村:
ChatGPTなどの対話型AIに対して対話をするためのテキストのことをプロンプト(Prompt)と呼びます。プロンプトエンジニアリングとは、対話型AIに対して最適なプロンプトを設計し、応答や生成されるテキストの品質や内容を向上させるように制御する技術のことを言います。
―基礎編で学ぶ「魔法の呪文」がプロンプトになるのでしょうか?
井村:
基礎編では普通の会話調の質問で欲しい回答を得られるようになるコツを学びますが、応用編ではそれをもっと理論的に行うテクニックを学びます。
ChatGPTには、膨大な量のテキストデータを学習させた大規模言語モデルが使われています。その中から自分たちの意図に適する回答をうまく出力させるには、"適切な文法"を使ったプロンプトを設計することが重要なんです。
―文法とは、いわゆるプログラミングのコードみたいなものですか?
井村:
プログラミングとはまた違う知識です。
例えば、ChatGPTで徳川幕府について調べるとします。その際、「徳川幕府について教えてください」とだけ打ち込むのではなく、欲しい情報を得るための出力形式を指定します。
(例)[歴代]の名前は[名前]です。在位期間は[年数]です。
[]の中に入る変数として、
#歴代
初代
2代
3代
といった具合に指定すれば、以下のような回答が自動的に生成されます。
"初代の名前は徳川家康です。在位期間は1603年から1605年までです。"
"2代の名前は徳川秀忠です。在位期間は1605年から1623年までです。"
"3代の名前は徳川家光です。在位期間は1623年から1651年までです。"
こうした質問の設計方法を理解したうえで、Zero‐ShotやChain‐of‐Thought(思考連鎖型)といった、より効果的な対話や生成を実現するためのプロンプトテクニックを学びます。
生成AIがどのような動き方をしているか理論的に学ぶことで、ChatGPTをより実践的に使いこなしていただけるようになります。
ChatGPTの苦手なこと
―先ほどの出力形式の変数のところに自社の商品名や在庫数などの数字を入れたら、自動的に「Aの在庫は100個、Bの在庫は200個......」みたいなリストを作ってくれそうですね。
井村:
はい、できます。ただし、読み込ませたデータを決まった形式で出力するだけで、計算はできません。1+1はいくつ?と聞いたらおそらく2と返してきますが、それはその答えを事前に知っているだけで、Excelのように計算して答えているわけではないんです。だから、10桁×10桁などの計算式を入力しても、それらしい答えを返すだけで恐らく間違えます。
―なるほど。ChatGPTにも苦手なことがあるんですね。
井村:
生成AIは、収集したデータを分析して新しいデータを作り出すことができるので、アイデア出しなどをするのは得意です。しかし、元々のデータが意図しない方向に変わっていくことも起こりえる世界です。そのため、正確性を求めた情報を出力させたり、いつでも同じ答えを求めたりするのは苦手かもしれません。
リスクを知ってChatGPTと
上手く付き合うための研修
―ChatGPTに自社のデータを読み込ませると言語モデルの中に取り込まれてしまい、他の人の質問の回答としてその情報が引き出される可能性がある、と聞いたことがあります。そうしたリスクがあるのでなかなか組織として導入に踏み切れない、という方も多そうです。
井村:
はい。そうした不安を解消していただくためにつくったのが、
(半日研修)ChatGPT理解研修~導入事例やリスクを知り、組織での活用方法を検討する
です。
基礎編を受講された方から、「個人的に使っているけど会社ではまだ使えない」というお悩みを伺い、日本全体としては様子見というか、普及までにはまだ壁があると感じていました。訪問先でも、民間企業ではビジネスチャンスと捉え積極的に導入する動きがあるものの、官公庁では特に様子見の雰囲気が強く、水面下で様々な情報を調べていらっしゃいました。
そこで、ChatGPTの正しい情報やリスクを研修の場で提供することができれば、二の足を踏んでいるお客さまも必要な対策を取ったうえで導入に踏み切っていただける、その手助けをできればという思いで開発を始めました。
―日本は保守的な人も多いですが、リスクが明確になれば組織レベルでの普及も一気に進むと思います。どのようなプログラムで解消していただくのでしょうか。
井村:
ChatGPTのリスクとしてビジネスの上で問題になっているのは、主に著作権侵害や情報流出の部分です。どうしたら著作権侵害にあたらないのか、どんな情報を入れたら危険なのか、といったさじ加減をつかんでいただくために、他社の事例など解説を踏まえたうえで、ケーススタディを通してじっくり考えていただきます。「リスクがあるから使わない」のではなく、どうすればうまく付き合っていけるのか、セキュリティ対策の面も含めて理解を促していきます。
最後に、業務におけるChatGPTの活用事例やアカウントの登録方法などをお伝えし、「明日から自組織でも使ってみよう!」というところまで持っていくのがこの研修のゴールとなります。
―ChatGPTを活用するうえでの注意点をしっかり押さえたうえで、民間・自治体限らず多くの組織で業務効率化を実現していただけるといいですね。
政田:
ChatGPTをどんな業務に使っていきたいかというのは組織や業界によって異なります。現状の業務のなかで、これはわざわざ時間をかけてやらなくてもChatGPTを使えば時短できるんじゃない?みたいなものを一旦洗い出していただくと、何かしらの業務改善につながると思います。
すでに体験済みの新人に
ChatGPT研修を実施する意味とは
―最近できたChatGPT関連研修の中に、
(新入社員・新社会人向け)DX入門研修~ChatGPTに触れ、業務効率化のマインドを獲得する
があります。こちらを開発した背景について教えてください。
井村:
デジタルネイティブ世代である最近の新人の皆さんは、従来のDX(デジタルトランスフォーメーション)について座学中心で学ぶ研修だと、"知識としてはとっくに知っている"という方が多いんですよね。育成ご担当者さまからも「もっと手を動かせる体験型のプログラムはない?」というお話をよく伺っていました。
そこで「ChatGPT vs 新人の業務」みたいな企画をご提案したところ非常に反応がよかったので、ぜひ公開講座でもやってみようということで開発しました。
―これから入ってくる新人の皆さんは、すでに学生時代にChatGPTを使ったことがあるという人も多いのではと思いますが。
井村:
そうだと思います。この研修は、新人の皆さんにデジタル技術をより身近に感じていただき、業務で活用できるマインドを獲得することが一番のポイントです。それには、新人の皆さんにもおなじみのChatGPTを使うのが一番伝わりやすいのではないかと考えています。
例えば、長い文章を自分で要約するのとChatGPTで作ったものを比較してみるとか、上司への報告メールの添削をChatGPTにやってもらうなどのワークがあります。「自分で書くものとはこんな違いがあるんだ」「ここまでやってもらえれば、あとは自分でブラッシュアップして提出すればかなりの時短になるな」みたいな感覚をつかんでいただくことが、業務効率化のマインド獲得につながります。
また、学生時代と違ってChatGPTのなかで取り扱うデータの重要度や危険度は格段に上がります。そういったことを自覚していただくために、今後業務で活用するうえで身につけておくべきデジタルリテラシーを学ぶ章も設けています。
―業務効率化のマインド獲得という点では、新人向けのPython研修もあります。そちらとの違いはなんでしょう?
井村:
とっつきやすさの点だと思います。Pythonの場合、これまで手作業だった業務を自動化できるなど、業務改善に対するインパクトは非常に強いものがあります。しかし、プログラミング言語になるので、実践で使えるスキルを身につけるには3~5日程度の研修受講が必要です。難易度は高いですが、デジタル人材として活躍する人材を育成するにはPython研修がおすすめです。
一方ChatGPT研修に関しては、「DX入門」と銘打っている通り、デジタル技術がここまで身近な存在になっていることを概念として理解していただくためのプログラムになります。1日で受講できるので、ビジネス基礎など学ぶことが多い新人研修期間中でも実施しやすいと思います。
―なるほど。Pythonよりもさらに幅広い受講者を対象とした、間口の広い研修と言えそうです。
ChatGPTは
すべてのビジネスパーソンの必須スキルになる?
―今後ますます注目されそうなChatGPT研修ですが、これまで様々な組織で行われているDX研修とかリスキリングプログラムなどにも、定番スキルのひとつとして組み込まれていくのでしょうか。
政田:
ビジネスパーソン全体がDXに関する基礎的な知識やスキル・マインドを身につけるための指針として経済産業省が定めている「デジタルスキル標準」(※)において、生成AIに関する記述が2023年8月に追加されました。これもChatGPTの急速な普及が影響していると考えられます。
各組織の研修ご担当者さまも、デジタルスキル標準をベースにしてDX教育計画の詳細を決めるという方が数多くいらっしゃいます。すべてのビジネスパーソンが身につけるべきデジタルスキルに生成AIが加えられたことで、ChatGPTの習得を検討される組織が急速に増えていくのではないかと考えています。
さらに生成AIという点で言うと、MicrosoftのOffice系ソフトにChatGPTと同じ大規模言語モデルを組み込んだ製品も出てきています。ExcelやWord、パワポといった馴染み深いツールの中で生成AIを使っていくことになるので、そうしたニーズに応える研修も早急に開発してまいります!
井村:
生成AIは今がまさに黎明期であり、これからますます成長するでしょう。ChatGPTも、これからの時代は、「パソコンが使える」というのと同じレベルで使いこなせる人が増えると思います。
とはいえ、生成AIが人間の仕事に置き換わってしまうのではという心配は杞憂です。いかにも「それらしい」回答を生成していても、まだ膨大な情報の中から「取り出している」だけであり、完全に新しいものを生み出せるようになるのはまだだいぶ先の話ですので
政田:
まだ今はChatGPTからの回答は不完全なものが出てくるので、正解を求めるというより、あくまで検討のためのベースとして使っていただくのがおすすめです。
井村:
情報をバーッと集めるのはChatGPTに任せたとして、それらの情報が正しいかどうかを読み解くことのできるクリティカルな目線を持ち合わせることも、ChatGPTと上手く付き合っていくには大事ですね。
インソースでは、ChatGPTをより便利に、より安全に使っていただくために、組み合わせて活用するとさらに効果的なスキルや知識を学べる研修を、お客さまの課題にあわせてご提案します。さらにこういう使い方ができるようになるための研修がほしい、などのご相談があれば新しく開発もいたしますので、ぜひお気軽に営業担当までお問合せください!
※経済通産省「デジタルスキル標準」(最終アクセス 2023/9/20)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/main.html
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