研修を語る
2024/04/24更新
作りこみ型研修を語る
【ニーズ】
機械部品商社さま(従業員数約250人)の「30代の営業担当者を鍛えたい」というご要望から、本研修が生まれました。
12か月間、毎月1回研修を行う案件。その会社の社長さまから見た30代の営業担当者は、「行動の意味付けがない」「論理性と戦略性がない」という点が問題点でした。当然、当社としてはロジカルシンキング研修をベースにしてご提案をしたのですが、社長さまの反応は「イマイチ。ピンとこない」というもの。
そこから試行錯誤を繰り返して、最終的にGoサインが出たのが、「カリキュラムは、受講者が現場で求められることから組み立てる。テキストも、スキルを説明するだけではなく、会社の過去の成功体験と絡めて、 どのように使えばいいのかがイメージできるように作る」というものでした。
【効果】
受講者はこれまで「なんとなく行ってきたこと」を「明示的に、こうした方がよい」と認識することができました。
「どのように活かせたか」「定着にいたったか」はまだまだこれからですが、受講者が、顧客のホームページや新聞などから情報を得る姿勢に、変化がみられています。
今回、開発したテーマのひとつが「顧客視点で思考の幅を広げる」です。
この会社様における「顧客視点」を、「顧客の商品と市場、必要とする技術を理解すること」と「顧客のステークホルダーを理解すること」として、ワークでは、考えを発散させながら、ステークホルダーのを洗い出しをしました。
その結果、日常、意識して触れることが少なかった海外の政治情勢が、自分の顧客にとっては大きな影響があることが分かったり、顧客の顧客が上場にむけて動いていたりすることが、実は自分の会社への発注にも影響を与えそうであることに気づくことができました。
【特長】
「作りこみ型研修」は「受講者にまさに求められること」を
研修カリキュラムにすることが最大の特長です。そのために「事前調査」を実施しています。
事前調査の中で最も重視しているのが「事前アンケート」です。過去に営業を経験した幹部や、受講者の上司の方々を対象にアンケートを取らせていただきます。
そのアンケート回答結果を元に「受講者が身に付けるべき『行動の意味付け』や『論理性、戦略性』とは何か」を考え、カリキュラムを練るために、お客さまと当社で話し合いをします。 その話し合いの結果をもとに、研修としてどのように構成するのか、中項目として相応しいのは何かを考えます。
今回であれば、「顧客のことを知ろうとする姿勢とそのやり方」と「ものごとを組み立てて考えるやり方」を大きく目的とすることになりました。それを実現するための研修カリキュラムは以下の2つです。
タイトル:「顧客視点で思考の幅を広げる」
- 1.CSとは何か
- 2.顧客を知る
- 3.企業分析の方法
- 4.成功したビジネスモデルを参考に、幅を広げる
タイトル:「営業が使うロジカルシンキング」
- 1.ロジカルシンキングとは何か
- 2.モレなくダブりなく
- 3.だから、どうして
- 4.書き出し、並べる
- 5.表で比較する
いずれのカリキュラムも、受講者にとって必要なことをアンケートにより調査し、具体的な過去の事例から、「これがこの会社においてロジカルであること」を探り出し、オリジナルで作成したカリキュラムです。
【重点ポイント】
4点のポイントを押さえた「オリジナル」の研修を作ります。
- 1.カリキュラムを受講者に合うかたちに組み立てます
- 2.テキストを、受講者の方が理解しやすいように表現します
- 3.成功事例をテキストの中に入れます
- 4.ワークも、現場で想定されることを念頭に置いたものにします
実は、上記のお客さまと同じく「中堅営業向けの研修」を当社インソース内でも作成しようと、事前調査をしました。結果としては、お客さまと当社では見事に傾向が異なり、当社向けは当社向けとして、現在、いちから組み立てているところです。
大きく違っているところとして、上記のお客さまは「個の力」を伸ばすことで、多様な場面に最適な行動を取ろうとする傾向が強かったこと。1つひとつの成功体験が、インソースの社員である私から見るとアクロバティックで、「よく、こんな動きができましたね」と驚くような事例がたくさんありました。
反対に当社インソースは、成功体験が、「いかに社内のリソースを上手く使って、いい仕事を作り上げるか」ということに集中しました。1人ひとりが強くなくとも、会社として蓄積したノウハウをうまく活用することで成果を出そうとしているのが当社の特徴のようです。
まるで、狩猟民族と農耕民族のように差がくっきりと出ましたので、上記のお客さまで実施した「営業が使うロジカルシンキング」とは、同じロジカルシンキングをテーマとした研修であっても、組み立てが異なります。同じ要素(例えば、MECE)を研修内で取り上げる可能性は高いですが、ニュアンスやワークは違うものになります。
このように、受講者がビジネススキルを現場でどのように用いるのかまで含めて考え、
「オリジナル」の研修をお作りします。
【演習】
オリジナルのワークを作ります。
例として、ロジカルシンキング研修の「モレなくダブりなく」という項目の、
「社長に営業同行をしてもらうにあたっての準備をしましょう」というワークを挙げます。
これは、以下の3点を考えるためのワークです。
- ・社長に同行して欲しい先
- ・当日の動線
- ・同行してもらうときに準備するもの
直接的には上記の3点を洗い出すのですが、なにしろ「社長に同行してもらう」わけですので、その前提として考えるべきことがあります。
まずは、「社長の立場で考えると、どのような先に社長を連れていってほしいと考えるはずか」を考える必要があります。ひと口で言うと「重要な先」です。では、社長目線で重要な先とはどのような先なのか。洗い出しをするために、まず「取引が過去に1度でもある先」と「取引が過去に1度もない先」とまず切ってみて、それぞれにおいて「社長に同行してもらう程に重要であるとはどういう先か」を考えます。
次に、「取引の金額」や「これまでの関係性」、「競合からの防衛先」や逆に「競合からのルートチェンジを狙っている先」など、個別の切り口を考え、その切り口をもとに具体的な営業してもらうべき先を洗い出します。当然、どうしても同行してほしい先など、優先順位も洗い出しと同時につけておきます。 社長に同行していただくべき先の洗い出しができたら、次に、スケジュールに落とし込んでいきます。
社長が遠方からいらっしゃるのであれば、最寄駅に何時に到着されるのか、または何時に営業同行を開始してもらえるのか。お帰りは何時にどこからどこに向かって出発するのかなど、まずは基本的な情報を押さえます。
その上で、優先順位と動線を仮置きし、アポ取りをしていくことになります。優先順位の高い先のアポの入り具合によっては動線が変わる可能性があるので、複数通りのシミュレーションをしておく必要があります。
いかがでしょうか。ロジカルシンキングでいう「MECE」のワークを、実際に現場で活用することも想定して、このように作りこみました。 (「同行してもらうときに準備するもの」の説明は割愛します)
【ひと言】
「なぜそのスキルが必要なのか、どのように使うのか」を、
社内事例と紐づけながら語れるのはとても強いです。受講者の納得感と利益実感が違います。
今回は、中堅営業担当者が対象のスキルアップ系の研修でしたが、様々なテーマで作りこむことが可能です。