研修を語る
2024/05/21更新
読解力研修を語る ~意図を正しく理解し、次の行動を読み解く
読解力を磨く「三つの要素」を身につけます!
―「読解力向上」がテーマの研修ですが、読解力にもさまざまなものがあると思います。具体的にはどのようなことを学べるのでしょうか。
この研修では、ビジネスシーンで求められる読解力を、基本となる「常識力」と「語彙力」、本質や要点をつかむ「要約力」、そして言外の意を汲み取る「想像力」、この3つの柱に分けて向上させていきます。
―どれも仕事をする上では大切な要素ですね。顧客に対してもですが、一緒に仕事をするチームに対しても重要なスキルだと思います。
その通りです。仕事をしていて「なんだか伝わらない」「なんでそうなった」ということは、誰にでも経験があると思います。ただ、それが常態化すると生産性の低下につながりますので、この研修では伝達やコミュニケーションのロスをなくすことで、個人だけでなく会社全体の生産性向上を目指しています。
―とてもよくわかります。確かに、「勉強ができるのに、読み取りが苦手」という人はいます。同じチームや取引先にいると困りますね。
従来のビジネス研修は、コミュニケーションや文書関連において「伝える側」の視点に立ったものが多かったのですが、この研修は「情報を受け取る側」のスキルを向上させる内容です。ビジネスでは、ただ読んで理解できるだけでなく「読んで(聞いて)正しく理解し、期待される次の行動がわかること」が求められます。相手の意図を理解するのが苦手な方はもちろん、さらに仕事の質を向上させたい方にもおすすめします。
コミュニケーションできない若者が増えています
―この研修は、主にどういう方向けに構成されているのでしょうか。
基本的には若手から中堅、非管理職ということになっていますが、実際には年齢や役職は限定しておらず「5~6年くらい仕事をやっているがコミュニケーションが上手にできない」「読解力の問題でよく業務上のつまずきがある」というような方に対して、人事や上司からお問合せをいただくことが多いです。
―すでに何か問題があって、受講されるということですね。
そうですね。この講座をウェブに公開して以来、お客さまからのお問合せが非常に増えました。内容としては「文書によるコミュニケーション能力を鍛えたい」といったものが多いです。昨今、メールやチャットでの会話が増えるにつれ、その中で情報や意図がうまく伝わらない問題が浮かび上がっています。そこで、受け取る側のスキルをもう少し鍛えた方がよいのでは、と考える会社が増えてきました。
―メールやチャットは現代のビジネスに必須ですから、そこがうまくいかなくては業務に支障が出ますね。講座の紹介に「若者の読解力が低下している」と書かれていますが、現代の若者に特化した問題ということですか。
メディアで記事をご覧になった方もおられると思いますが、国立教育政策研究所が行っているPISA調査(※)で、若い世代の読解力が低下しているという結果が出ています。もちろん、文書の形式や触れる状況が今と昔では違いますので、単純に比較することはできません。しかし、ビジネスの現場で実際に起こっている問題であり、それを解決する手段としてこの研修があります。
(※)参考:国立教育政策研究所 OECD生徒の学習到達度調査(PISA) https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html (最終アクセス:2022/2/16)
―研修の内容説明に「煩雑な情報をまとめることが苦手」「指示を理解したり、相手の意を汲むのが難しいと感じる場面がある」とありますが、自分の周りにも当てはまる問題が確かにあります。上司世代との文化が違うのも、その一因かなと思ったりもしますが。
それもあるかもしれませんね。受けた教育や文化も違いますし、今の若い世代は動画に触れる機会も多いです。その状況の中で、より円滑なコミュニケーションができる能力を養っていこうという内容です。
「何がわかっていないのか」に気づくことが重要
―読解力が不足していると「こういうミスをおかしやすい」という例を教えていただけますか?
「こうして欲しい」と言われた内容と、全然違うことをしてしまうというのもありますが、先々の目的を見据えたり周囲の状況を考えることなく、単純に言われたことだけしかしない方も多いですね。想像力の欠如と言いますか、何かおかしいと思っても確認せずやってしまう。臨機応変な対処ができない方は多いです。
―指示に従うという点は評価できますが、気が利かないですね。「ちょっと考えればわかるだろう」と言ってしまいそうです。
まさに、それなんです。困るのは、本人が何が悪いのかわかっていないため、事態を軽く考えてしまって、結果的に繰り返してしまうことです。
―そのような方が、この研修を受けるとどうなりますか?
この研修の三本柱のひとつ、読解力のベースとなる「常識力」と「語彙力」について、テキストの第二章で徹底的に学ぶのですが、皆さん普段あまり「あなたの常識は大丈夫ですか」という話はしないですよね。この研修では、そこを掘り下げていきます。
例えば、章の最初に「なぜ『食い違い』が起きてしまうのか考える」というワークを行い、自分のどこがおかしいのかというポイントを導き出します。そして章の最後で「仕事の目的とステークホルダーを整理する」というワークを通じて、実戦的な常識や語彙力を身につけてもらいます。
―自分がおかしいと思っていない人には、ショックかもしれないですね。
自覚している人は努力するでしょうから、まずは気づくことが第一歩ですね。そして第三章では「要約力」のトレーニングです。ここでは、要点をつかむ力を修得していただきます。読解力の足りない方は情報が混濁しやすいので、意見と事実を分ける、事実を時系列に整理するなど、具体的に考えをまとめるコツを解説します。
さらに、第四章では「想像力」を高め、言外の意を汲み取る方法を学びます。部長からのメールを題材にして、Aさん・Bさんの行動を良い点と改善点で考えるケーススタディは、自分ならどうするかという自己分析にも役立ちます。
自分で「想像力がある」と思っている人は要注意
―第二章から第四章、3つの要素についてお伺いしましたが、この中で最も研修の肝になる部分はどのあたりでしょうか。
最も重要な項目は、研修の最後に行う総合演習「実践!ビジネス読解」です。それまでに学習した全ての事柄を通して、総合的に読解力を測りましょうという内容になっています。実際に読み取っていただき、「自分はこう思う」「いや私はこうだった」という意見交換をしながら、想像を広げていただける内容になっています。
―インソース様が独自に行っている、効果的なワークなどありましたらご紹介ください。
先ほど少し触れた、第四章の部長からのメールを読み解く「【ケーススタディ】部長からのメールを読んで行動したAさん・Bさんのケースを読み、良かった点と検討すべきだった点を考える」は、ユニークだと思います。
―AさんとBさんの対応について意見を出し合うケーススタディですね。
はい、部長から「台風が来た」というメールを受けて、文面に指示されたことだけ行う人と、想像力を働かせていろいろ先回りして対処できた人と、対比することで「気づき」を得られるワークになっています。自分で「想像力はある」と思っている人ほど、実はそうでないケースも多いので。
―確かに。わかっていない人ほど、自信があるし反省しないケースは多いですね。
「何でだめなの?」「これでよくないですか」と思っている人が、どうしてだめなのか、どこがよくないのか、ワークを通じてはっきりと認識できることも少なくありません。
―3つの要素の中で、読解力のない人には何が難しいと思われますか?
難しい、という点で言えば「要約力」になるかと思います。「本質をつかみ要点をおさえる」という目標を掲げていますが、要約に関しては本質をきちんと理解できていないと、まとめることさえできません。そのため、難易度が高い作業だと考えます。この項目では、要約の目的と効果を理解してもらったうえで、要約の方法を学んでいただきます。
わからない人にわからせる、講師陣の技術と熱意
―読解力やコミュニケーションに問題のある方を指導するに当たり、理解を深めるためにどのような工夫をされていますか?そもそも意図を取り違える方が多いわけですよね。すごく難しいのではないかと思ってしまいます。
弊社ではさまざまな研修を行っており、その中には「わからない方にわかっていただく」ための講座が多数あります。例えば「わかりやすい文章を書きましょう」といった内容の研修であれば、「わかりやすいとはどういう意味か」から、説明する必要があります。
私自身、プログラムや教材を組み立てる際には、その点を強く意識し、何度も「それはどういう意味か」をくり返し自問しながら、行きつくところまで追求して落とし込んでいきます。想像力を向上させる研修なのに「想像してね」ではどうしようもないですから。
―導き方の技術もさることながら、熱量の高さも素晴らしいですね。そのような指導には慣れておられるのでしょうか。
まだまだ勉強することは多いです。ただ、どうやって理解していただくかということは、いちばん大切にしている部分です。
―このような読解力に特化した研修は、あまり見かけないのですが、それには理由があるのでしょうか。
増えつつはあるのですが、確かにあまり多くはないですね。他社で数が多くない理由はわかりませんが、弊社ではとてもお問合せが多く、ご好評をいただいています。会社でお申込みをされる際に「本当に理解できるでしょうか」と心配される場合もありますが、社内で教育を完結させるよりも、外部の講師から専門的な指導を受ける方が、すんなりと落とし込めるケースは珍しくありません。
回数を重ねることで、さらに効果を実感
―この研修では、ワークやケーススタディが豊富に組み込まれていますね。それは学習効果に関係する部分でしょうか。
そうですね、ワークの比重が重たくなっている理由の一つとして、先述の「自分のこととして落とし込んでもらう」ために、必要なステップだからということが挙げられます。自分ならと考えて状況を疑似体験してもらうことで「そういうことか」という気づきにつながります。
―教材を拝見すると、普段よくありそうな状況設定がされていますね。これだと自分のこととして考えやすそうです。
はい。例えば常識力と語彙力の章では「動きやすい格好で来てください」という指示に対して、スーツで来てしまった人がいるが、どう思いますかというようなワークがあります。指示を出した側は作業着を想定していたのに対し、受けた側は「仕事は基本的にスーツだし、汚れてもいいスーツで行こう」と考えたパターンです。
―「動きやすい」の意図を取り違えたんですね。実際にありそうです。
また、「今日は重要なお客さまを訪問するので、きちんとした格好で来て」と伝えたのに、部下はリュックサックを背負って来た、というようなケースもあります。若手の方からすると「普通じゃない?」と思うことでも、上司やお客さまの世代からすると常識的にズレていることがあります。何が悪いということではなく、自分の世代の常識に縛られることなく、視点を変えてみましょうということも、お伝えしているポイントです。
―それは実践的ですね。気づきを得た受講者の方からは、どのような感想が出ますでしょうか。
アンケートでは「ここを意識すればよかったのだ、ということに気づけました」というコメントが多いです。そもそも、意思の疎通ができないということ自体、実感できていなかった方々ですので。
あとは、要約力の章の最後に「上司に要約文を提出する」というワークがあるのですが、これがけっこう難易度が高いんです。そのワークに関しては「要約するってこんなに難しいことだったのか」というコメントも多くいただいています。
―要約は、誰にとっても難しいことですよね。研修をお申込みになった会社側から、「受講した社員がこう変化した」というようなフィードバックはありますか?
受けた翌日から別人のように変わるということはないのですが、積み重ねることで、より効果が出るというお声は頂戴しています。例えば、とある企業さまから「一回で終わりではなくて、四回、五回とくり返し研修を受けたい」というお話をいただき、読解力というテーマに特化した講義はもちろんのこと、もう少し内容を広げて、コミュニケーション能力を高める分野まで受講していただいたことがあります。
その結果、くり返しているうちに三回目、四回目あたりから「かなり効果が出て来ました」という感想をいただきました。「普段、業務上で行う説明から違ってきました」とのことでしたので、生産力が向上していることは間違いないです。なかなか自分の弱点は見えにくいとは思いますが、この研修を通じて個人だけでなく、チームや会社全体の読解力不足におけるロス削減を目指していただけたらと思います。
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