研修を語る
2024/07/18更新
若手社員研修を語る ~経験学習サイクルを回し、自己成長を加速させる
「経験学習サイクル」をまるごと取り込んだ独自のプログラム
―「経験学習サイクル」について、若手向けにお教えいただける研修ということですが、まずは概要をお聞かせいただけますでしょうか。
「経験学習サイクル」とは、アメリカの教育理論家デビッド・アレン・コルブによって提唱された経験学習理論です。「経験から学び成長するためのフレームワーク」であり、経験→省察→持論化→試行の4つのプロセスで経験を回し、得た学びを実践できるようになることを目指します。
この研修では経験学習サイクルを回し、自己成長を加速させるというテーマを掲げています。若手社員を対象に、成長スピードをアップさせることで、前向きに活躍するためのヒントを得ていただくことが、内容の主軸となっております。
―この研修で、ここがポイントという部分はどこでしょうか。
最大のポイントは、何と言っても「プログラム構成」になると思います。この研修はユニークな仕掛けがありまして、プログラム全体がまるごと経験学習サイクルとなっています。それぞれの項目で学んだ内容をワークで実践していくことで、最終的に「経験学習サイクルとは何か」を体感していただけるのが大きな特徴です。
―それは面白いですね。経験学習の研修は、講義で理論を理解するものが多い印象ですが、なかなか実感として身につきにくいという声も聞きます。プログラム全体が経験学習サイクルになっているのであれば、直感的に理解することができそうです。
実はこのプログラムを開発したきっかけは、お客さまからのご要望でした。とある企業からのお声がけだったのですが、「経験学習サイクルの回し方を、体感できる研修を作ってもらえないか」というリクエストをいただきました。そこで、若手社員が理解できて身につきやすい研修を、開発したという経緯があります。
―そんな背景があったのですね。きっとその企業では、従来の研修による学習効果に満足できなかったということでしょうね。必要から生まれたプログラムだからこそ、受講者も効果を実感できるのだと思います。
「2~5年目」の研修が大きな効果を生む理由とは
―若手社員向けということですが、入社何年目くらいになりますか?
2~5年目くらいになります。その理由としては、伸びる人と伸び悩んでいる人の差が出てくる時期というのが、まずあります。そして昨今はメンタル不調などが原因で、若手が3年目あたりで辞めてしまうことが少なくありません。そうなると会社にとっても損失が大きいですから、ぜひ前向きな気持ちで成長して欲しいという、若手へ向けた応援のメッセージの意味もあります。
―こちらの研修は、企業単位でお申込みになることが多いのでしょうか。
現在は講師派遣による、企業単位での研修が多いですね。その場合、伸び悩んでいる方だけを集めるのではなく、あえて伸びている方も一緒に研修を受けてもらうことで、経験学習サイクルの核である思考プロセスの違いが明確に現れますので、よい刺激や気づきが得られることがよくあります。
また、伸びている社員の方も、改めて自分が普段から実行していることが、経験学習サイクルであることを実感してもらえます。一方、公開講座ですとさまざまな企業の方とチームになれますので、自社にはない情報を交換できたり、改善のためのヒントを共有できたりするというメリットがあります。
―こういった研修は、やはり5年目くらいまでの時期を逃すと、効果が薄れてくるものでしょうか。
会社での勤務年数が長くなってくるに従い、周囲からフィードバックがもらえなくなってきます。誰かから意見をもらって、それを素直に吸収できるというのは若手の強みですから、研修もその時期のうちに受ける方が身につきやすいと言えるでしょう。
―この研修は、時期的に集中する季節はありますか?
実施時期に関しては、企業によってまちまちです。よく行われているのが、入社してすぐは新人研修、何年目はこの研修......というように、社員の勤務年数や階層ごとに研修をスケジューリングするやり方で、その中で2~5年目の若手向けに活用していただくことがよくあります。
経験学習サイクルとは、「できる人」の思考プロセス
―この研修を受ける方は、お悩みを抱えておられるケースが大半だと思いますが、受講後にどういった変化が見られるでしょうか。
若手のうちは、上司からいろいろと注意を受けたり、お客さまからお叱りをいただいたり、さまざまな失敗をすると思います。中には、同じ失敗をくり返してきた人もおられるでしょう。そういう方が、失敗の原因を理解して成長の糧とする「できる人の思考プロセス」を身につけることが、最も大きな変化です。
そのためには、振り返ることの大切さを理解していただくことも、大きなポイントだと思います。その助けになるのが、教材にも記載しております「仕事を振り返るKPT法」というもので、「KPTのフレームワークに沿って、1週間の仕事を振り返る」というワークを通じて、振り返りのプロセスを学んでいただきます。
―このプログラム全体が経験学習サイクルであるということでしたが、ワークの流れ自体が「経験→省察→持論化→試行」というプロセスに沿っているわけですね。
はい、その通りです。まずはテキストの第一章でご自身の経験を洗い出していただき、第二章でその経験を意欲的にどう取り組むのかを考えます。次に第三章では、経験を振り返ることによる省察を行い、第四章でそれらをどう捉えて実践に移していくのか、持論化を行います。研修を通じて経験学習サイクルを実際に回してみる、と考えていただくと、わかりやすいかもしれません。
―その中で、最も受講者さんに訴求したい思いはどのあたりになりますか?
大事にして欲しいのは「経験の積み重ね」です。若手の方は、経験を受け身で捉えてしまうことがよくあります。そこで少し考え方を変えて、前向きに成長の糧として積み重ねていくという、マインドチェンジをしていただくことが、まずは突破口かなと思っています。
中には「あんまり挑戦したくない」とか「現状維持でいいかな」と尻込みしている方もおられます。しかし、自身の経験を洗い出し、「今にして思えばよい経験だった」という振り返りのワークを通じて、経験を積み重ねることの意義を理解し、それを次につなげる考え方を学ぶことが、この研修では土台になる部分だと考えます。
―経験を積み重ねる第二章のワークで「少し頑張れば達成できる課題をSMARTの法則を踏まえ具体化する」というのがあります。この少し頑張れば、というのは目標を設定しやすいですし、達成感もありそうですね。
「SMARTの法則」というのは、Specific(具体性)・Measurable(計量性)・Achievable(達成可能性)・Relevant(関連性)・Time-bound(期限)の頭文字を取ったもので、目標設定のために用いられます。数値であったり目指す人物像であったり、職種によっても目標は異なりますが、取り組むべき課題を明確にして、自分に課すことは非常に大切です。その際、達成できる範囲にあるけれど、簡単すぎない「少し頑張れば」という加減がポイントになります。
切り替えが早い人、遅い人、それぞれの弱点とは
―ここまで、伸びる人の思考プロセスについてお話を伺いましたが、逆に伸び悩みやすい人とは、どのような特徴があるのでしょうか。
原因は人それぞれではあるのですが、切り替えの早すぎる方は振り返りが足りない場合が多いですね。何か失敗をして上司に注意されても「やっちゃった」で終わってしまい、そのうち次の仕事が来て気持ちが切り替わってしまうタイプです。
―悪い意味で切り替えが早い人ですね。反対に、切り替えできなくて悩む人も多いのではないでしょうか。
そちらのタイプの方が多いです。弊社の他の研修で「打たれ弱い若手や新人」を想定して作ったレジリエンス研修があるのですが、最近非常にニーズが高いです。上司の側も「今の若手に物を言うのは難しい」と考えられている方が多いのではないでしょうか。
近年は、ちょっと注意をしただけで、会社に来なくなったり辞めてしまったりする人もおられます。転職しやすい社会環境になったこともあり、叱責を受け慣れていない人や、困難を乗り越えられない人は、簡単にあきらめてしまう傾向が強いのです。
―その二つは対極にあるタイプですね。指導の技術も違ってくるのではないでしょうか。
あくまでも、目指すところは「前向きに、ポジティブに」ということなので、両方のタイプに対応する内容になっています。講師も両方のタイプの受講者に合わせて講義をします。
フィードバックと振り返りの重要性を理解すること
―フィードバックをもらえるのが若手の強み、というお話を先ほどお伺いしましたが、研修の第三章の中にも「他者からフィードバックをもらって、目からウロコだと感じたことを洗い出す」というワークがあります。とても興味深いタイトルですが、受講者からどんな意見が出ますか?
第三章が「振り返りとフィードバック」の章になっておりまして、その最初に行うワークなのですが、素朴なものからユニークなものまで、さまざまな「目からウロコ」が出て来ます。多い意見としては、「自分が常識だと思っていたことが、実はそうではなかった」というパターンが結構あります。社会人になってからそれがわかって、ショックを受けた方も少なくないようです。
―次の第四章、「持論化」を学ぶ部分ですが、ここに「経験を多面的にとらえマイセオリーにする」というタイトルがあります。この「マイセオリー」とはどういうものなのでしょうか。
もらったフィードバックをベースに、今後どう改善するかを考えるステップに進む際、経験を振り返ると同時に「改善点をどう定着させるか」も非常に大切なポイントになってきます。これが、今後ずっと改善を続けていくための持論化です。
この章のワークでは、第二章で洗い出した過去の失敗からひとつピックアップして「なぜ失敗したのか」を分析します。そして二度と同じ失敗をしないためにはどうするか、具体的な行動に落とし込んでいきます。
―頭の中で要領よくやってしまう人もいそうですね。
そうですね。伸びる人、失敗をくり返さない人は、すでにそれをやっています。しかし、できていない人は具体的に形にして、スケジュールに組み込むなり書き出すなり、何らかの工夫をしないとなかなか定着しません。それが経験から得た教訓の持論化、マイセオリーの考え方です。
―では、経験が積み重なるにつれ、マイセオリーも進化するということですね。
はい、立場や役職も変わっていくでしょうから、仕事をしていく間は常にブラッシュアップしておく必要があります。
できるとできないの差、実は「ほんのわずか」です
―受講者の方にとって「成長する人」と「伸び悩む人」の違いは、とても知りたいことだと思うのですが、具体的にはどういう点が違うのでしょうか。
教材の中でも「経験したことを振り返り、学びを得て次につなげられるかどうか」ということを挙げているのですが、やはり決定的な違いは「思考のプロセス」だと考えます。できる人は何も言われなくても、経験を何らかの形で振り返っていたり、問題があれば改善案を練っていたり、具体的な行動を起こしています。
逆にそれができない人は、経験したことを行動に結びつけていないので成長できません。そのため、失敗をくり返して周囲からの信頼を徐々に失っていくケースが多いです。そしてその結果、レベルの高い仕事を任されにくくなるため、さらに成長が期待できないスパイラルに陥りやすいです。
―自分の失敗や弱点を、はっきり認識するワークも多いですよね。洗い出しをしながら落ち込みそうです(笑)
そんなに暗いムードにはしませんので、心配はいりません。ただ、自分のダメな部分をしっかり受け止めて改善しないと、業務の上で信頼を得られません。実際、できる人との違いは考え方ひとつ、ということが多いです。ちょっとしたヒントを得て考え方を改めるだけで、仕事のやり方が違ってくる人は多いですよ。
―若いだけに、きっかけがあれば大化けする可能性も大きいということですね。
きっと本人も「何で同じことをしているのに差がつくのだろう」というジレンマがあると思います。そういう方に、考え方のポイントや新しい視点を提案して差しあげるのが、この研修の意義だと思っています。
―研修を受けられた方から、「このような変化があった」というお声があったらお聞かせください。
「振り返りをしていなかった」という反省をされる方が多いです。日々の仕事の中で、振り返りをしたことのない方は、けっこういらっしゃいます。「KPTのフレームワークを知っただけでも効果があった」というお声もありました。
あとは、現在の自身の歩んでいるキャリアに対して、迷っておられる若手の方も多いのですが、考え方を少し変えたり柔軟に対応したりする手助けとして、プランドハップンスタンスの「予期しない出来事によってキャリアの80%が形成される」という項目も取り入れています。それらも含め、研修全体を通じてお伝えしている「前向きに経験を積み重ねよう」というメッセージが「心に刺さった」とおっしゃる方も多いです。
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