研修を語る
2022/12/22更新
実践!クリティカルシンキング研修を語る ~リーダーとしての思考力を強化する
一歩踏み込んで、「クリティカルシンキング」を実践
―一言でいえばどんな内容の研修になるのでしょうか?
クリティカルシンキング研修は、インソースのラインナップの中でもベスト5に入る引き合いの多い研修です。とくに公開講座では週2回ペースで実施しているのですが、毎回、多くの受講者にご参加いただいております。
今回の「実践!クリティカルシンキング研修」は、従来から実施しているものを基礎版とするならば、実践版という位置づけとなります。
―クリティカルシンキングの研修はなぜ、人気なのでしょうか?
ビジネスパーソンに求められる能力として、合理性にもとづいて物事を処理する力がより強く求められていることが挙げられるから、だと思います。
少し前はロジカルシンキングについて学びたいという声が圧倒的に多かったのですが、その後、さらに一方踏み込んでクリティカルシンキングも併せて学びたいという方が増えているようです。
―「実践版」がリリースされたのはいつごろですか?「基礎版」との違いについても教えてください。
基礎版を受講されたお客さまなどから、「もう少し上のレベルの研修」「実践寄りの研修」を求める声が寄せられたのがきっかけで、2021年に本研修を開発しました。なお、公開講座で実施したのは2022年2月が最初です。
基礎版の研修は、考え方・概念を教えるというところに焦点を当て、丁寧に理屈を説明していく内容になっており、初めてクリティカルシンキングというものに触れる受講者にとっては新鮮に感じていただける内容だと思います。
一方で一定の知識がある方にとって、考え方や概念だけでは少し物足りないと感じられる部分もあると思われます。実践版では、実際にどのようなシーンで、どのようにクリティカルシンキングが使えるか、というところに焦点を当てています。そこが「基礎版」との違いです。
「批判的な視点で物事をみる」。その能力が問われる時代
―なぜ今、「クリティカルシンキング」が必要とされているのか、お考えをお聞かせください。
「疑う」と言うと少しネガティブに聞こえてしまいますが、常に「これは本当だろうか」「本当にこれだけでいいのだろうか」と、批判的な視点でチェックすることが避けて通れない、という現実があると思います。
ネット上には情報が溢れ、ステルスマーケティングやフェイクニュースも存在する中、何が正しくて何が間違いなのかを自分で判断して情報を選び取っていかなければなりません。そのような時代に、クリティカルな視点というのは必要不可欠です。
―ビジネスパーソンがリーダー・管理職として活躍していくためにも、クリティカルな視点は必要ですね。
以前であれば、リーダー・管理職は前例を踏襲していれば、その役割を果たすこともある程度可能でした。経験値さえあれば、リーダーらしく、管理職らしく振る舞うことができたのです。しかし今は、新しい局面の中でどう判断して、どう速やかに指示を出せるかが問われます。つまり、前例のない中で判断を下していかなければならないのです。過去のやり方を頼りにしてマネジメントをしてきた人にとってみると、厳しい時代になってきていますね。
変化の激しい時代の中では、自分で瞬時に判断して行動するということが極めて重要になります。クリティカルな視点を常に持って判断を下していくということが、リーダー層には求められます。そうした意味でも、クリティカルシンキングは時代に不可欠なスキルになってきているかなと思います。
若手からマネジメント層まで、業種階層問わずニーズのある研修
―受講者にはどのような方が多いのでしょうか?
クリティカルシンキングは、いわゆる「スキル系」の研修と位置付けられるので、一般職や管理職問わず、幅広い層の方に受講いただける内容になっています。公開講座でも、推奨する階層を特に限定していないので、学びたい方はどなたでも受けることができる研修です。
―「基礎版」で学んでからの受講がお薦めですか?
基礎版で学んでいただいた後にこの実践版を受けていただけますと、より理解度が高められると考えていますが、基礎版を飛ばして最初から実践版を受けていただいても全く問題ありません。
ただし、実践版と銘打つだけあって、研修の中で扱う事例やワークは、実際の具体的ビジネスシーンを想定して作られているものがいくつかあります。社会人経験が浅い人にとっては、前提となる知識がないためにピンと来ない部分があるかもしれませんので、ある程度の社会人歴のある方にご受講いただくことをお勧めします。
なお、講師派遣型研修として実施する場合には、ケースや事例をご要望に応じてカスタマイズすることが可能ですので、社会人経験の少ない方でも進めやすい形にアレンジすることが可能です。
クリティカルシンキングのカギは「疑問を正しく湧かせる」こと
―研修の内容についてもお伺いしたいと思います。研修の中でもっとも大切なのは、どの部分だとお考えですか?
クリティカルシンキングの「肝」になるメインの部分について、今回の研修では3フェーズで構成しています。フェーズ1が「疑問」で、フェーズ2が「分析」、フェーズ3が「再構築」です。
この中であえて一つ、もっとも大切なものを選ぶとすれば、フェーズ1の「疑問」だと思います。「疑問」はいわばクリティカルシンキングの本丸であり、疑問を正しく湧かせることができるかどうかが、カギになります。
ただ実際のクリティカルシンキングでは、「疑問」というアクションだけを単独で行うことはなく、「疑問」を持ったらそれを確かめるという「分析」の作業とセットで頭の中では行われています。
「疑問と分析の往復」みたいなことが、ごく短い時間の中で行われるのがクリティカルシンキングの実態でしょう。そういう意味で、フェーズ1、フェーズ2を繰り返した後に、フェーズ3へと進む、というのがこの3つのフェーズの捉え方として正しいのではないかと思います。
―「疑問を正しく湧かせる」ことがクリティカルシンキングには不可欠だということですね。
クリティカルシンキングが「できる」「できない」の差は、心構えや意識の要素が多分にあると思っています。そもそも、疑問を持ってものを見る、考えるということの癖づけができているか、できていないか。そこが大きいのです。
楽観的な人というのは、いちいち疑問を持つことを面倒臭がって、「多分、大丈夫だろう」と前に進めてしまいがちです。「もしかしたら違うかもしれない」「失敗するかもしれない」といった健全な心配を差し挟むことから逃げている、とも言えます。
さらにいただけないのが、「間違っていたとしても責められるのは上の人だから、自分たちが心配することではない。言われた通りにやっておこう」といった行動習慣が染みついた人です。こうした思考に慣れてしまっている人には、クリティカルシンキングの出番はありません。
そういう意味では、クリティカルシンキングは、論理性だけでなく、マインド寄りの要素も含めた思考術と言えるのかなと思います。
思わず鵜呑みにしてしまう!?クリティカルシンキングを試すワークも
―研修ではどのような演習、ワークが行われるのでしょうか?
最初のワークで、受講者のみなさんのクリティカルシンキング力を試させていただきます。例えば「日本人は貯蓄好きで知られており、家計貯蓄率は主要国の中でもトップクラスである」という問いに対し、「Yes」か「No」を選択していただきます。同じように、どこかで聞いたことのあるような、なんとなくこっちが正解じゃないかな、と思うような質問に答えていただいて、後でその時の自身の「クリティカルな姿勢」を振り返っていただきます。
なお、質問の正誤についてはぜひ、研修の中で確かめていただければと思います。
―こうしたワークを入れた狙いを教えてください。
一見正しそうに見えることも、ただ鵜呑みにするのではなく、間違いである可能性もあるのではと頭の中で検証していただくことが狙いです。とくに、権威のある人の話や、公式な打ち出し方をしている情報は鵜呑みにしてしまいがち。「まだ確定した話ではないのではないか?」とか、「特定の立場の人からの一つの考え方に過ぎないのではないか?」といったクリティカルな視線で見る癖をつけるきっかけにしていただきたいと思います。
―「実践編」ということなので、研修に盛り込まれている演習・ワークの数も多いのですか?
演習の数自体が多いわけではありませんが、一つひとつの演習に費やす時間は長めになると思います。基本的に、実例ベースで作られていますので、正解を求める、というよりも、それに取り組む中で、クリティカルシンキングの必要性、重要性を実感していただくというのが、この研修の中でのワークの位置付けです。
「真か偽か」「一部か全部か」、二つの視点を身につける
―研修の効果について、お考えをお聞かせください。
これまでに受講された方のアンケートの中に、「解説を聞いた時点ではわかった気になっていたけれど、いざワークに取り組んでみると、慣習的な考え方に引っ張られて批判的にものを見ることができなかった」という方がいらっしゃいました。しかし、その難しさを実感いただけただけでも、この研修を受けていただいた意味があったと思います。
クリティカルシンキングに必要な視点は大きく分けると二つです。一つは、目の前にある情報が「本当かどうか」と思うことと、もうひとつは、その情報に対して「他にも無いか」と思うことです。
「真か偽か」「一部か全部か」という二つの視点で疑問を投げかける習慣を、この研修を通して体得していただければと思います。
―すでにクリティカルシンキングができている方の場合でも、研修の効果はありますか?
習慣的にクリティカルシンキングができている方でも、それをあまり意識することが無かったために、言語化できなかったケースも多いと思います。自分がいつもどんな風に考えているのか、どこに疑いの目を向けてクオリティの担保を図っているのかを、きちんと言葉にして話せなければ、自分のノウハウを後輩たちに伝えることができません。できているけど話せない、ということを自覚する機会として、受講する意義はあると思います。
―最後に何かお話いただけることはありますか?
全員が全員、クリティカルシンキングを簡単にマスターすることはできないかもしれませんが、「気づくチャンス」さえあれば、次に動ける方も多いのではないでしょうか。こうしたきっかけに、この研修を受講していただけばと思います。